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スマホ時代のビジネスを支える“保証”

スマホ完結のUXを追求することで生じる新たなリスクを補う“保証”とは?

第1回

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優れたUXでユーザーから選ばれた2つの例

 現在、スマートフォン上で完結するサービスが多くを占めるようになりました。スマホアプリを提供しているサービス事業者各社は、日々熾烈なユーザー(顧客)獲得競争を行っていますが、そこで重要になっているのが「UX(ユーザー・エクスペリエンス:顧客体験)」の向上です。UXを簡単に説明すると「ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験」ということになりますが、優れたUXを備えるプロダクトには、ある共通点があります。それは、ユーザーから「手軽にすぐにサービスを利用できる」という信頼を勝ち取っているということです。

 ユーザーの操作を簡略化することで圧倒的に選ばれたサービス例を2つご紹介します。

 1つ目は、2017年6月28日に「目の前のアイテムが 一瞬でキャッシュに変わる」をキャッチフレーズとして登場した即時買取りアプリの「CASH」です。リリース初日に1件あたり約5,000円、総額3.6億円以上のアイテムの買取りを実施した後、わずか16時間でサービスを停止したことで話題になりました。また、当時CASHを運営していたバンク社が有力ネット企業に約70億円で買収されたこともあわせて伝説となっているサービスです。

 CASHを使うユーザーは、

  1. スマホにアプリをダウンロードする
  2. 電話番号を登録してSMSで認証する
  3. 現金化を希望するアイテムのカテゴリーとブランド、コンディションを選択する
  4. アイテムの全体が映るように写真を撮影し送信する

と4つの操作をすることだけを求められます。それだけで即座に査定金額が提示され、その金額での売却に同意すれば、その場でCASH内のウォレットに入金がされます。「キャッシュを引き出す」を選択すれば、手数料の250円を引かれた残りが、ユーザー指定の銀行口座に振り込まれるという仕組みです。

 操作開始から10分程度で換金まで完了するというところまでUXを磨きこんだことが、このアプリが初日から多くのユーザーを獲得できた要因といえます。

 2つ目は、「Rentio」というレンタル・サブスクリプションサービスです。これは、カメラや生活家電、ベビーカーまで2000種類を超える最新のアイテムを、必要な時に必要な期間だけ使うことができるというサービスです。

 Rentioで家電製品を利用するためには、スマホ上で氏名、メールアドレス、電話番号、商品を届けてもらいたい住所を入力するだけで手続き完了となり、最短で翌日には使い始めることができます。また、使用後の返却も、商品に同梱される返却伝票付きのボックスに入れてコンビニレジに持っていくだけで完了という手軽さです。借りる際も返却の際も所要時間ものの数分程度で完了する“体験”を得られる点で、Rentioはユーザーの圧倒的な支持を得ています。

 情報が何でも手に入る上に差別化の要因が少ない今、人々は「使いやすい」「わかりやすい」「早い」といった“体験”を重視するようになっています。CASHもRentioも、簡単にすぐに利用してもらえるUX設計を最優先で行った結果、ユーザーから信頼を勝ち取ったのです。

 しかし、優れたUXの追求は「事業者側のリスク増」というトレードオフを生みます。次のページからは、その“リスク”について解説していきます。

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この記事の著者

小山 裕(コヤマ ユタカ)

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