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経営戦略としての知財

旭化成中村氏とKIT杉光教授が語るIPランドスケープ──DX、3つの目的、事業部との対話の設計とは?

ゲスト:旭化成株式会社研究・開発本部 知的財産部長/シニアフェロー 中村栄氏【前編】

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旭化成の“知財イノベーター”、中村氏の20年来の取り組み

杉光一成氏(KIT虎ノ門大学院 イノベーションマネジメント研究科 教授、以下敬称略):中村さんのキャリアに関して、まずはお聞かせください。

中村栄氏(旭化成株式会社 研究・開発本部 知的財産部長兼シニアフェロー、以下敬称略):新卒で旭化成に入社して、1989年に知的財産部に配属されて以降、幅広く知財関連業務を担当しました。私は特に知財情報調査、解析分野の経験が長く、知財領域の情報解析分野で高度専門職に任命されました。知財情報の戦略的活用に十年越しで取り組んできた私にとって、IPランドスケープはまさにライフワークの1つといえます。

杉光:知財情報の活用がライフワークとのことですが、「知財情報の戦略的な活用」と聞かれたら、中村さんはどう定義しますか。

中村:当社において、知財情報を戦略的に活用する場合、「守りの活用」と「攻めの活用」の2種類があると考えています。「守りの活用」とは、いわゆるSDI(知財情報の継続配信)を利用して、事業ごとに知財情報の戦略データベースを構築することで、このデータベースは、当社では自らの事業を「守る」砦として機能しています。具体的には、事業領域ごとの開発テーマに関連する「他社特許情報」をSDIで収集します。そこに、技術分類や他社特許と当社技術との関係等の付加情報を登録、その付加情報により検索性を高めて研究開発や他社対策に役立てられるようにしています。この取り組みは、約10年かけて本データベースを構築し、今でも各領域で活用されています。

 一方、「攻めの活用」としては、上記の取り組みと同時期に知財情報を可視化する「特許マップ」から研究開発の方向性を見極める取り組みを2000年頃から行っていました。しかし、当時は解析ツールもまだまだ発展途上でしたし、なによりも指導すべき私たちの知財解析の知識やスキルがまだまだ稚拙で、現場の手応えを得るには及びませんでした。ただ、知財情報を研究開発や事業戦略に戦略的に活用する時が絶対に来ると信じ、解析手法などについて外部の有志と勉強会などを立ち上げ、「アングラ」で勉強をしておりました。

 その後、大量のデータを解析可能な高性能の解析ツールが出現し、世の中もリーマンショックからの回復の兆しが見え、各社中期経営計画の中で「新規事業創出」という言葉を見かけるようになり、新規技術開発の機運が高まってきたことを感じるようになりました。

 2016年、当時のCTOが知財の見える化を志向していたこともあり、このタイミングで、知財情報の経営戦略への活用に関するレポートを作成してプレゼンをしたところ、好感触を得ることができました。その後、2017年7月17日、日本経済新聞にIPランドスケープを事業戦略に生かすことに関する記事が掲載されたことも相俟って、IPランドスケープへの注目度が国内の知財業界で一気に高まりました。

 まさに機が熟したというタイミングで、2018年4月にIPランドスケープを専任で行う組織として知財戦略室を新設、具体的な活動が始まりました。

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