「スター経理」を輩出し、経理の活躍の場を広げたい
──攻めの経理、あるいは守りでもこれまでやってこなかったことに手を付けるのは、今の業務にかかりきりになっていたらできません。そのための時間を作るのに、経理部門あるいは個人としてどんなことができるでしょうか。
前田:たとえば『マネーフォワード クラウド会計』のようなクラウドの会計ソフトや請求書作成ソフトを使い、自動化できる作業はすべてシステムにまかせるということがありますよね。仮に100社に対して毎月同じ売上請求書を発行しているといった固定化した業務があるのなら、そこから順に自動化していけばいいわけです。形式やルールが決まっている処理を精査して、「この業務はクラウドのソフトがいいんじゃないか」「このワークフローは自動化できるんじゃないか」と、システムに乗せていくんです。
1日8時間のうち6~7時間を伝票処理に費やしていたら、私が申し上げたようなマインドセットをもち、アウトプットをしましょうと言っても精神的な余裕も物理的な時間もないでしょう。定型処理は最大でも半日までに収まるように目標を置いて、残りの半日を業務改善や攻めの経理としての提案をするために使う。そういった仕事の仕方にシフトしたほうが良いのだろうと思います。
──自動化を上手く取り入れつつ、それで生まれる時間で新しい経理としての役割にシフトしていくということですね。
前田:導入するソフトウエアの中に、そういった仕事にも生かせる機能があるとよりいいですね。
──集まったデータを分析、提案するところで、経理パーソンとしての価値が出ますね。最後に、前田さんは「スター経理」と呼ばれるような人を輩出していきたいとのことですが、その狙いは何でしょうか。
前田:経理の重要性を理解してもらうために、私一人でできることには限界があります。しかし、いろいろな会社の経理部長さんや経理部のリーダーの方々が、これまで以上に外に向かってどんどん情報発信することで変化が始まると考えています。たとえばインタビューを受けたり登壇したりするような人たちが出てくれば、経営者や役員の方々、現場の方々の見方も変わると思うんです。「経理って誰がやっても同じじゃなかったんだ」「経理を誰がやるかによって、これだけ会社も変わるんだ」と気づいてもらえるんじゃないでしょうか。
また、スポーツ選手を見ていれば明らかですけれど、スター選手が出てくれば、そのスポーツをやりたいという子どもたち、そのスポーツをやらせたいという親御さんが増えて裾野が広がっていきます。同様に、経理の中でスターを出すことで、経理が活躍できる領域が広がっていくと思うんです。そのために、自分が登壇したセミナーに参加した方々や出版した書籍を通して知り合った読者の方々の中で、この考えに共感していただける経理出身者を一人ずつスカウトして「つなぐ」ことを始めました。そうした方々と連帯してチームを組んで、より経理の業界を盛り上げていけるように情報発信していきたいと考えています。