事例2:『Omotenashi Patterns』
それでは、もう一つ慶應義塾大学 井庭研究室の事例を取り上げたいと思う。次に取り上げるのは、一人で新しい領域のパターン・ランゲージ制作に取り組んだ原澤香織さんの事例である。彼女は、『プレゼンテーション・パターン』や『コラボレーション・パターン』のイラストを描いた中心的なメンバーである。今年彼女が最終的につくったのは、お客さんとそれをもてなす人の間に心地よさが生み出される「接客」の実現を支援するパターン・ランゲージ『Omotenashi Patterns』である(2013年11月発表)。このパターン・ランゲージは、自身で描いた水彩のイラストによって絵本のようなつくりになっている点に特徴がある。このプロジェクトを通じての「つくることによる学び」のデザインについて、2013年4月の段階で原澤香織さんが書いた文章を見てみよう。
井庭研で研究を始めて1年半が経過し、だんだんと自分らしさのようなものが分かってきました。そのなかで気づいたことは、長期的に見て「自分はどんな人生を送りたいか」を考え、そこから「では今どんな研究をするべきなのか」ということを《セルフプロデュース》しながら考えていくべきだ、ということです。そのような視点で見るといろいろなことが《学びのチャンス》に思えてきます。大学の授業はもちろん、アルバイトでお客さんと接したり、仲間と協力してなにかをつくったり、これまでにない新しい経験から学びを得ることができます。
これからも、様々な本を読んだり、新しい《フィールドに飛び込む》ことで、《隠れた関係性から学ぶ》ことをしたいです。また、新しい人と出会うことで、《学びをひらく》機会が増え、《はなすことでわかる》という経験も増えてくると思います。
半年ほど前から本をたくさん読む習慣をつけており、《量は質を生む》ことを感じています。本の読み方も分かってきましたし、自分に合う本に出会ったときの感動や、反対に合わない本と出会ったときにどう耐え抜いて読むかという術など、本を読むという行為自体からも様々な学びを得ています。読書のモチベーションを維持するために、《成長の発見》も実践しています。具体的には、本を読み終えたら「読了」とtwitterでつぶやくようにしたり、線を引いた箇所だけを抜粋したものを蓄積しておくところもつくったりもしました。このようにして、これまでの読書量を可視化することは、確実にモチベーションになっており、これからも続けていきたいと考えています。
現時点で、自分の研究の方向性に対して迷っている部分が少なからずあるので、人や本とたくさん出会い、《フロンティア・アンテナ》を意識しながら、《創造への情熱》を素直に持てるようなテーマを見つけていきたいと考えています。また、外国語の習得は相変わらず自分にとって最難関課題であると感じているので、《外国語の普段使い》を実践できたらと思っています。