『第五の権力---Googleには見えている未来』エリック・シュミット/著
エリック・シュミット氏の初の著書。2025年、世界人口80億人のほとんどがインターネットにつながるとき、どんな社会が実現しているのだろうか。インターネットの力を「第五の権力」と呼ぶシュミット氏が、これから訪れるデジタル社会を予測する1冊。
個人の暮らしはもちろん、国家や社会、革命やテロにいたるまでを、インターネットの良い面にも悪い面にも光を当てながら論じるシュミット氏。インターネットやテクノロジーの進化は、決してすべてがハッピーな結果をもたらすわけではない。が、彼は未来に対して非常に楽観的だった。
人々にアクセスを与えたら、あとは彼らに任せよう。ほかに何が必要なのか、何を開発すべきなのかを彼らはすでに知っていて、どんなに貧弱なツールを使ってでも、イノベーションを起こす方法を見つけ出すだろう。
世界はいつだって、ボトムアップで少しずつ良い方向に変わっていくのかもしれない。インターネットが人々に与える力が、その変化を加速するのである。
『データの見えざる手: ウェアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』矢野和男/著
ビッグデータ研究の第一人者である、日立製作所の矢野和男氏。彼のチームが2006年から集め始めた膨大な数のデータがいま、人間行動や社会現象、さらには企業の儲けや人間の幸せの法則までをも明らかにしつつある。ビッグデータという名の「見えざる手」の謎を、矢野氏は本書で解き明かしていく。
本書では後半、ビッグデータ解析技術によって生まれた学習マシンをビジネスに活用するエピソードが語られる。この手の話になると、「機械が人間の仕事を奪う」といった機械vs人間の対立構造の議論がされがちだが、矢野氏が描くのは機械によって人間がより豊かになる未来だ。
大量のデータを活用して自己の利益を追求するとき、前記の古典的な「見えざる手」を超える、新たな「データの見えざる手」の導きが生まれるのだ。ビッグデータを使って自己の利益を追求すればするほど、見えないところで、「データの見えざる手」により社会に豊かさが生み出される。これにより、人の「共感」や「ハピネス」など、これまで経済価値とは直接関係なかったことが経済価値と結びつく。
デジタル新時代に真に目指すべきは、ロボットと人間が共存できる世界である。それが夢物語ではないことを、本書は教えてくれる。