社長がデータ分析し、社員はクリエイティブな業務に集中する
宇田川元一氏(以下、宇田川):毎週日曜日に、社員向けに100ページのレポートを作るとのことですが、どのような内容ですか。
榊淳氏(以下、榊):よく誤解されるのですが、「あれしろ、これしろ」ということはほとんど書いていないんですよ。「こういうことが起こっていました」というレポートです。
先週数字が良かったのか良くなかったのかということと、その理由、つまりホテルのタイプが影響していたのか、特定属性のお客さんの動きが影響していたのか、といったことを細かく分析して説明しています。
お客さんが「一休.com」にどういう経路で入ってきているかは、データで全て分かるんです。“一休”と検索して来る人は、一休で予約すると決めていて、“高級ホテルA”で来る人は高級ホテルAに泊まるということを決めている人です。それが“箱根 旅館”だと「旅行に行くかどうか、まだ決めていません」みたいなお客さんが入ってきたということが分かります。PCなのかスマホなのか、広告から入ってきたのか通常の検索で来たのか、新規のお客さんなのかリピーターなのか、それらのお客さんがどういう予約の状況にあるのか、全て見えます。
全体の売上の良し悪しから気になる部分をドリルダウンして見ていくので、毎週見る数字が違い、レポートする内容も違います。
宇田川:そういう経営者のレポートが来ると、社員にも自分が頑張った結果や、どこに課題があるのかが分かり、自分がやっている仕事の意味が分かるようになりますね。
榊:はい。会社が今どういう状態なのかが分かりますし、自分の担当領域のこともよく見えるようになりますね。
それに、僕がレポートすることで、社員の皆さんが「こころに贅沢させよう。」というミッションに向かってどういう施策を実行するのか、というクリエイティブなテーマに時間を使えるんです。状況が分からない中では何を改善すべきかが分からず、クリエイティビティを働かせることはできませんから。
宇田川:社員の皆さんがクリエイティブに働くための支援を、社長としてやっているということですか。
榊:これは社長としてというよりも、データサイエンスが大好きな一社員としてやっていることです。ただ、たまたまそれをやっているのが社長なので、社員に意味のないレポートを作らせるようなこともありません。
大企業にありがちな「あの数字どうなってる? レポートして」ということもないですし、社員が「うちのチーム、いい仕事してます」とアピールするためにレポートを作るということもない。経営会議で数字の報告を受ける必要もありません。親会社や社外への報告も僕が作るので、「これは違う。作り直して」というような無駄や齟齬が生まれないんです。