ガートナージャパン(以下、Gartner)は、アプリケーションに関する展望を発表した。ビジネス環境が急速に変化する昨今、日本企業にはDXを通じた競争力強化が求められているが、2026年時点で、競争力強化につながるDXを実現する日本の大企業は10%に満たないと予測している。
Gartnerでは、DXを「ITの近代化(クラウド・コンピューティングなど)から、デジタルの最適化、デジタル・ビジネスの新たなモデルの考案までを指す」と考えているという。同社のアナリストでシニア ディレクターの川辺 謙介氏は、「DXの本質は、デジタル・テクノロジを活用することで新たなビジネスモデルを創出することであり、新たなビジネスモデルは、自社の戦略に沿った、競争上の優位性を確保できるものであることが重要です」と述べている。
競争優位性を確保する要素には外部環境と内部環境があり、内部環境については、デジタル・テクノロジを活用して業務改革を推進し、競争力を高めていく必要があるという。それには、非効率なアプリケーションの改善/刷新や、付加価値のあるエクスペリエンスの提供などといったアプリケーション改革を実行して、内部からの競争力強化を確保し、ビジネス変革に貢献することが重要だとしている。
同社シニア ディレクターの片山 治利氏は、「競争力のあるDXに成功する企業には、競争力強化を目的としたレガシー・アプリケーションの近代化、ガバナンスの効いた開発プラクティスの民主化、効果的なデータ管理と利活用による合理化のすべてに取り組んでいるという共通点が挙げられます」と述べている。
現在、多くの日本企業が既に何らかのDXに着手しているものの、DXの取り組みの成果は、コスト削減や作業の効率化/自動化の実現のような、業務改善レベルのものが多い状況だという。ビジネス変革までを目指している企業の割合は少なく、2026年に至ってもなお、競争力強化につながるDXを実現する日本の大企業は、10%に満たないとGartnerは予測している。
一方、デジタル時代においては、企業と顧客の距離が短くなり、またデリバリのサイクルも短縮されているため、デジタル・テクノロジを活用した顧客応対プロセスの抜本的な改革が求められているという。多くの日本企業では、個別業務に注力する属人的なプロセスが数多く残っており、アプリケーションを活用して顧客に付加価値を提供するというビジネス本来の目的を達成できていない状況が見られると述べている。
先進的な商用アプリケーションを、個々人の考え方を尊重する個別最適のアプローチではなく、デリバリ・スピード、再現性、スケーラビリティといったデジタル・テクノロジの長所を活用する体系的なアプローチで進める方が、中長期的には高い競争力を獲得できるという。2026年にかけて、顧客応対プロセスの体系化に取り組む日本企業の80%以上は、DXを通じてビジネス目標を達成し、市場競争力を勝ち取るとGartnerは推測。一方、旧態依然あるいは属人的な顧客応対プロセスを継続する企業は、後れを取ることになるのではないかと述べている。