ANAホールディングスは、第41回ICAO総会での国際航空のCO2削減に関する目標水準の見直しのほか、各国の環境規制動向、先進技術の発展等、経営を取り巻く環境が常に変化していることを踏まえ、2030年度の中期環境目標および2050年度までのカーボンニュートラル実現に向けたトランジション戦略をアップデートした。
国際航空のCO2削減に関する目標水準の見直しへの対応
ANAグループは、アジアを中心に成長が期待される国際線需要、訪日需要の増加に合わせて航空ネットワークを拡充していく一方で、第41回ICAO総会で見直された国際航空のCO2削減に関する目標水準も遵守していく。
アップデート1:中期環境目標の見直し
これまで、2030年度の 『ANAグループ中期環境目標』 として内際合計の実質CO2排出量を2019年度以下とする目標を掲げてきたが、これを2019年度比 10%以上削減する目標へ変更した。
また、ANAグループでは、これまでも「2030年度までに消費燃料の10%以上をSAFへ置き換える」方針を掲げてきたが、これを『ANAグループ中期環境目標』として設定。これにより、官民連携のもと取り組んでいる国産SAFが製造・安定供給される環境整備に向けて、課題解決を一層加速させていく。
アップデート2:トランジション戦略の見直し
2024年度以降、内際合計の実質CO2排出量を2019年度比 10%以上削減するシナリオに変更。経済合理性も考慮しながら4つの戦略的アプローチを組み合わせて取り組んでいくが、追加削減分については「排出権取引の活用」で対応することを検討しているという。
4つの戦略的アプローチ
1.運航上の改善・航空機等の技術革新
離陸時の早期加速上昇、着陸後の逆噴射抑制、地上走行時の片側エンジン停止、エンジン洗浄等、運航上の改善等によりCO2排出量削減に取り組み、その実績を毎月ホームページで公開。
2030年度にはボーイング787型機100機以上の体制を目指し、省燃費機材への早期転換を推進していく。また、航空機の機体表面に鮫の肌のような特殊加工を施すことで飛行中の空気摩擦抵抗を低減し、CO2排出量削減に貢献する技術の実証および導入等にも取り組んいくという。
2.SAFの活用等 航空燃料の低炭素化
ANAグループの脱炭素社会の実現に向けた戦略の中核は、従来のジェット燃料よりもライフサイクルで約80%のCO2削減効果が期待できるSAFの活用。2030年度までに消費燃料の10%以上をSAFへ置き換え、2050年度には消費燃料のほぼ全量を低炭素化していくことを予定している。
3.排出権取引制度の活用
短中期的な対応として排出権取引を活用。ICAOで定められている基準に適合する信頼性の高い排出権によりCO2排出量をオフセットし、適切に情報開示をしていく。
4.ネガティブエミッション技術の活用
大気中からCO2を回収・吸収、貯留・固定化するネガティブエミッション技術の活用にも積極的に取り組む。具体的には、SAFの活用等だけで削減しきれないCO2を、Direct Air Capture(DAC)等によって大気中から直接回収し、永久的に 『除去』することで、2050年カーボンニュートラル(実質ゼロ)を実現する。