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組織戦略としてのデザイン

デザイン・フューチャリスト岩渕正樹氏が語る「トランジションデザイン」と「未来の考古学」とは?

「米国企業におけるデザイン・フューチャリストの実践と挑戦」レポート:前編

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 8月3日、武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパスにおいてセミナー「米国企業におけるデザイン・フューチャリストの実践と挑戦」が開催された。近年、米国企業では、デザインの手法を用いてビジョン策定や未来洞察を担う「デザイン・フューチャリスト」が注目を浴びている。同イベントでは、東北大学特任准教授であり、米国のJPモルガン・チェース銀行において同行初のデザイン・フューチャリストに任命された岩渕正樹氏を招いて、その仕事やミッションを紹介する講演が行われた。デザイン・フューチャリストとはどのような存在なのか。そして、今、なぜその力が求められているのか。米国におけるデザインの先端事例も盛り込まれた講演の様子をお届けする。

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デザイン・フューチャリストは狭義のデザインへの“反逆者”

「私の仕事を一言で紹介すると、『組織や社会に今とは全く異なる常識を提示し、実装する』ということになります。例えば、Uberのように『移動するために全く知らない誰かの車に乗る』という概念は、タクシー乗り場に行列を作っていた10年前や20年前には完全に常識から反するものでした。しかし、現在では、その非常識が先進技術を用いて社会に実装され、多くの人に利用されています。このように、我々の常識や価値観は長い時間をかけて変化し、過去の非常識が常識化した世界に私たちは生きているわけです。AIなどの特定の技術ではなく、過去から脈々と続く大きな価値観の変化を読み解きながら20年後、30年後の未来を描き、あえて非常識を提示するのが私の仕事であり、個人的にも興味を持っていることです」

 講演の冒頭で、岩渕氏はデザイン・フューチャリストの仕事をそう説明する。加速度的な技術の進化にあわせて、社会やライフスタイルは変化し、人々の常識も形を変えていく。そのプロセスの分析を通じて未来を見通し、現在からするとあえて非現実的・非常識なビジョンを構想・提示し、組織や社会の新しい可能性を探るのがデザイン・フューチャリストの役割だという。そして、その手法は一般的にイメージされるデザインのアプローチとは異なる。

 両者の違いを、岩渕氏は気候変動を例にとって説明した。一般的にイメージされるデザインという行為では、気候変動による気温上昇のもと、生活者のペインを抽出し、人間中心設計の考え方で、例えば首元を冷やすネッククーラーのようなガジェットを設計することが行われる。しかしこの場合、気温上昇の原因である気候変動には対処できておらず、対処療法的で根本的な問題解決には至らない。

 これに対して、デザイン・フューチャリストは、気候変動を緩和するための新たな常識や行動様式を提示・実装することでより根本の問題解決を図る。このようにデザイン・フューチャリストは既存の価値にコミットしないことから、岩渕氏は「私たちの仕事は狭義のデザインに対する反逆といえます」と強調した。

 2023年、米国ではAppleがゴールドマン・サックスと提携し、Apple銀行を設立するなど、金融業界の地殻変動が進んでいる。既存の銀行の価値が揺らぐなか、岩渕氏が所属するJPモルガン・チェース銀行では、新たな銀行のあり方を構想するデザイン・フューチャリストへの期待が高まりつつある。

「銀行とはそもそも、『お客様からお金を預かり、Transaction(口座取引)を正しく管理する』というミッションから始まったエンティティです。Apple銀行の登場などにより、近くの支店に行かずとも、高利息かつ全てアプリ内で取引を完結できる今、その銀行本来の価値観が揺らぎつつあるわけですが、そうした業界内に存在する凝り固まった考えを解きほぐし、新たな方向に導いていくのがデザイン・フューチャリストの役割です。例えば、最近の私の取り組みでは、クレジットカードの支払いが遅延している顧客に機械的に督促するのではなく、遅延の理由をヒアリングしてファイナンシャルプランやカウンセリングに繋げるサービスを構想し、実装する取り組みを進めています。これは、銀行の価値をTransactionからEmpathetic(共感)に捉え直したサービスといえるでしょう」

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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