可視化とデータ活用が生み出した、DX推進に欠かせない協業の文化
続いて、喜多岡氏から紹介されたのは、データの可視化を通じた顧客体験の進化、そして協業文化の醸成の具体例だ。
たとえば、マイグルを活用したショッピングセンターでのスタンプラリーでは、データの分析と可視化をすることにより、既存顧客のリピート率向上や新規顧客の来店増加が見られた。こうした成功事例は、他のグループ会社にも「自分たちも試してみたい」という波及効果をもたらしたという。
また、ナビアプリ「WESTER」のお気に入り駅登録機能を活用し、山陰地方の駅長たちが登録数を楽しく競い合うという新たな風潮も生まれた。中には実際の乗車人員を上回る登録数を記録した駅もあり、データの可視化が組織内に新たな活力をもたらしていることが分かる。
こうした文化の釀成がきっかけとなり、グループを横断する形での連携も可能となった。例として挙がるのは「ICO+(イコプラ)」キャンペーンだ。これはICOCA定期券をグループの「会員証」として再定義することで、ショッピングセンターやホテル、駅ナカ店舗などでの買い回りを促進するものだ。
このキャンペーンでは、グループ内での協業意識が高まったことで、ICOCAポイントでの利用商品が拡充され、顧客体験が大幅にアップグレードしたという。
また、鉄道事業での最重要商品とも言える新幹線に定価の半額相当のポイントで利用できるポイント商品や、また、系列ホテルにポイントを活用して上位クラスの部屋にアップグレードできるポイント商品など、グループの空きアセットを活用した商品も開発された。グループ各社が連携に前向きになったことで、事業の可能性も拡大したと喜多岡氏は話す。
「自分ファーストではなく、損して得取れ」という考え方の広がりは、人財面でも協業を重視する姿勢の強化に繋がってきた。2023年1月には、グループ全体で一貫したマーケティング戦略を策定する新組織が設立され、グループ各社からの出向者も参画している。こうした文化と仕組みが、企業としての一体感を高め、さらなる成長の基盤を築いている。