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「現場と経営」による新規事業の成功戦略

新規事業の再現性を高める「ビジネスプロデュースCoE」とは? 日本企業に必要な4つの役割と組織設計

第4回

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経営と現場を繋ぐ「ケイパビリティ向上」の最適解

 ビジネスプロデュースCoEの具体的な組織設計について、これまで多くの大企業と議論をしてきましたが、我々が考える最適なモデルの1つをご紹介しましょう。

 まず、ビジネスプロデュースCoEは新規事業を統括する部門長の直下に配置されます。世の中では戦略室や事務局と呼ばれるような形で設置されていることも多いです。

 ここで重要なのは、ビジネスプロデュースCoEを新規事業推進組織とは別の独立組織として分けて設置することで、個別の新規事業に対して責任を持たせるのではなく、あくまで新規事業に対する組織能力の向上に責任を持たせることです。

 そのため、新規事業を実際に検討・推進する現場メンバーと、新規事業部門全体の責任者の間に、独立した形でビジネスプロデュースCoEが入っていくという立ち位置が効果的です。

 多くの場合、新規事業の部門長が、CxOなど経営層と直接コミュニケーションを取る構造になっています。そうなると、部門長が「経営層とのコミュニケーション」と「現場メンバーのマネジメント」の両方を担わなければなりませんが、特に現場メンバーが増えるほど部門長一人では到底管理しきれません。

 だからこそ、ビジネスプロデュースCoEには、部門長と共に経営と現場の「橋渡し役」として機能することで、組織全体のケイパビリティを底上げすることが求められます。そのためにも部門長レベルとビジネスプロデュースCoEがまずは密にコミュニケーションを取って方針を形にし、それを継続的に経営層とすり合わせることで共通認識化を図ります。

 このようにして経営と共通認識となった方針を、現場メンバーに対しては新規事業プロセスの「型」として落とし込み、組織全体としての再現性を高めていくのです。

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「現場、意思決定、仕組み」を強くする、CoEの日常業務

 ビジネスプロデュースCoEは経営と現場の「橋渡し役」になることに加え、現場で新規事業の推進がスピード感を持って進むようにサポートすることも重要な役割です。多くの場合、新規事業は進捗具合によってフェーズを分けますが、ビジネスプロデュースCoEは複数のチームのあらゆるフェーズのテーマをサポートします。

 ここでポイントになるのは、新規事業の推進はあくまで現場メンバーに責任を持たせること、そしてビジネスプロデュースCoEは客観的な立場からの支援を通じて新規事業組織の組織能力向上に取り組むことです。

 日常業務としては、それぞれのチームと定期的に進捗や課題を確認しつつ、新規事業を前進させるために必要なアドバイスを行います。必要に応じて、ビジネスプロデュースCoEが新規事業検討の手本を示しながら、リードすることも求められます。

 また、各新規事業の状況を踏まえ、ポートフォリオを管理しながら、「現在、どのフェーズに、どのくらいの案件があるのか」を常に把握し、全体として目標達成に向けて適切に進んでいるのかを確認します。

 ビジネスプロデュースCoE内ではそれらの情報を週次で共有し、部門長とも週次でコミュニケーションを取って現在の状況についての共通認識を持ち、課題の明確化・改善を図ります。

 つまり、現場のリード、意思決定者との共通認識化、ノウハウの蓄積と仕組み化をすべて担い、個別の新規事業だけでなく、組織に対しても迅速なアップデートサイクルを回し、新規事業の「型」化・進化を行うのです。

 現場のリーダーはテーマと共に事業化フェーズに移行しますが、ビジネスプロデュースCoEは中長期で新規事業組織にコミットすることで組織能力を向上し、各社独自の新規事業の「特殊解」を作り上げます。

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オムロンの事例に学ぶ、ビジネスプロデュースCoEの評価の仕組み

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この記事の著者

田代 雅明(タシロ マサアキ)

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