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「現場と経営」による新規事業の成功戦略

新規事業の再現性を高める「ビジネスプロデュースCoE」とは? 日本企業に必要な4つの役割と組織設計

第4回

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ビジネスプロデュースCoEが担う「4つの役割」

 ビジネスプロデュースCoEには、主に4つの役割があります。

新規事業の要件を整理し意思決定を支援する

 1つ目は「経営の意思決定支援」です。 新規事業は既存事業と比べて意思決定が難しいことから、その前提となる「共通認識」を作ることが重要です。そのため、新規事業の規模感や時間軸、取るべきリスクなどの要件を事前に明確にし、現場と経営の間で共通認識を作ることで、再現性のある意思決定を行う仕組みを整えます。経営が一貫した意思決定を行えるように支援するのです。詳細は第2回で紹介しているので、ぜひ読み返してみてください。

ノウハウ蓄積と型化で新規事業の再現性と成功確率を高める

 2つ目は「ノウハウ蓄積・型化」です。これまで自社で行った新規事業への知見を、成功も失敗も含めて蓄積・型化することで、自社独自の「特殊解」を明確にします。それらを新規事業の検討プロセスにまで落とし込み、継続的にアップデートすることで、新規事業の再現性と成功確率を高めるのです。

 たとえば、ナレッジを蓄積・型化する仕組みとして自社の新規事業の「勝ちパターン」を定義することもあります。この連載で示した通り、継続的に新規事業を成功させている会社では、独自の考え方が根付いています。リクルートの「リボンモデル」はまさにその代表例で、モデルだけではなく、それを作り上げるための手順やプロセスについても言語化されています。自社のこれまでの新規事業を振り返った上で、しっかりと再現性のあるプロセスにまで落とし込むことが大事です。

経営の方針、現場のアイデアを翻訳しリードする

 3つ目が「継続的新規事業の立ち上げリード」です。具体的な役割としては主に2点あります。まずは、1つ目に述べた経営側との「共通認識」に基づいた目標設定や方針をブレークダウンし、現場側に翻訳する役割。そして、現場側から出てきた新規事業案を、経営の目線で言語化し、経営側が意思決定できるレベルまで引き上げる役割です。

 特に後者の、現場側の新規事業検討レベルの引き上げは、ビジネスプロデュースCoEに期待される役割といえます。

 多くの企業において、これまで新規事業に取り組んできた現場メンバーはほぼおらず、経営が意思決定できるレベルまで新規事業検討を推進し、意思決定の材料を揃えるスキルが不足しています。ビジネスプロデュースCoEは現場メンバーを支援しながら、時には自らが新規事業の検討を前に進めていく役割まで担います。先述したPMOによる管理ではなく、PLOとしてリードする意識が非常に重要です。

新規事業を生み続ける“人”を育てる

 4つ目には「ビジネスプロデュース人材の育成」が挙げられます。新規事業を進めるためには、様々な業界の構造やビジネスのポイントを理解することが重要です。単体の事業だけでなく、多くの事業や業界を横断的に見ることでそれらが理解できるようになります。

 ただし、ビジネスプロデュースCoEとして必要なスキルをすべて最初から有する人材は、ほぼいません。このような「事業のポイントを理解する」「考える引き出し」を増やしていくには、相応の育成時間がかかります。既存人材で足りない部分は研修や外部パートナーの支援で補いながら、数年かけて育成していけばよいと考えます。新規事業創造に必要な知見を意識的に蓄積し、新規事業を推進できる人材を育てていく仕組みが求められるのです。

 その他にも、新規事業テーマの進捗やポートフォリオの管理、新規事業の意思決定にまつわる会議の設定など、いわゆる「事務局」の役割もビジネスプロデュースCoEが担います。

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経営と現場を繋ぐ「ケイパビリティ向上」の最適解

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この記事の著者

田代 雅明(タシロ マサアキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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