外資系コンサルティングからノウハウを学んだ
− 本橋さんは通信業界を四半世紀に渡って歩いてこられて、今現在テクノロジーベンチャーの会社に参画されてます。経営戦略に関わる専門性はどのように磨かれたのですか?
本橋 KDD時代に社長秘書として経営者をサポートしていたことが基礎にはなりましたが、ボーダフォン時代に、外資系大手の戦略系コンサルティング会社と仕事をしていたので、彼らから相当ノウハウやスキルを吸収したんです。 資料の作成の仕方などのノウハウです。今となってはそれ自体は特別ではありません。スライドのテンプレート自体はもらって真似することができます。むしろ重要だったのは、ロジックなんですね。ロジカルに問題解決するための考え方を徹底的に学んだ。『社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)を上梓された前田鎌利さんもその時のメンバーでした。
ファクトベースで会社の数字を「洗う」
— その当時の外資系のコンサルティングのフィーというのはかなり多額と聞いていますが、中身はどのようなものなのでしょうか?
本橋 数か月の契約期間でも、億円規模だったと思います。成果物はプロジェクトによって違うんですが、とにかくたくさん資料を作るのは間違いないですね。一番最後のプロジェクトは、リストラのプロジェクトでした。そこでの仕事は、会社全部の数字を「洗う」ことでした。大企業になると経営者は、細かい数字を見ることができないので、コンサルタントが入って、経営者がわかりやすい情報に加工するんですよね。その上で本当に重要な、今やるべきこととを発見し提案していくというプロセスなんですよ。 リストラをおこなうために、どの部署がどれだけの貢献をしているかとかを細かく見ていきます。現在の貢献だけではなく、将来の貢献も数値化する。ポイントは、報告に際して細かい数字を絶対に見せずに、大きな絵と簡単なグラフとかで見せることです。
— 現場からリアルな数字を引っ張りだすにはリーダーシップがいるのではないでしょうか?
本橋 現場から重要な数字を見つけ出すために、プロジェクトチームをつくるのです。コンサルティング会社のリーダーとマネジメントのリーダーと現場のメンバーで。僕は経営側のリーダーでした。コンサルタントチームの姿勢は丁寧なんですけど、メンバーは彼らの指示にしたがって作業をするんですね。社員であれば物凄い細かいデータまでアクセスできますから、データをどんどん集めさせて分析を進める。コンサルティング会社に支払う多額のフィーは、そういう彼らの強制力を働かせる上での触媒にもなっていました。
もうひとつは、数字を洗う上で無駄な議論は排して、徹底的にファクトベースで追求することです。日本の会社は会議が多いと言われますが、ファクトに基づかないことが多いのです。誰かが、お客さんから「こう言われた」と言うとそのお客さんが、1人なのか100人なのか、そういうファクトを無視して議論をしてしまうわけです。数字からファクトを見つけて、最後は大きな絵をドンと見せてあげることが大事なんです。