本社と事業、海外子会社をつなぐ“重層的なFP&A”
栗原:どれほど優れた管理会計の手法があっても、組織としての体制が整っていなければ形骸化してしまいます。本書の後半では、組織設計についてアプローチされています。どんな内容でしょうか。
藤野:第4部「組織の中でFP&Aをどう機能させるか」では、FP&Aを単一の組織ではなく、本社のコーポレートFP&A、事業部、サプライチェーン拠点、海外子会社などが連携する「重層的な構造」として捉えて解説しています。第9章では、海外子会社へのFP&A設置をYKK APアメリカの事例で説明しています。
また、コーポレートFP&Aが全社目標を設定しつつ、事業FP&Aが計画の提案段階から対話を重ねて方針を擦り合わせていく重層的なコミュニケーションプロセスをキリングループやSOMPOホールディングスなどの事例とともに丁寧に描写しました。すべてのFP&Aは、CFOのもとに形成された一つのファイナンスチームだということが理解できると思います。

栗原:日本企業があらたにFP&A組織を立ち上げるための、具体的なステップも示されているのでしょうか。
池側:はい、第10章「FP&A組織への移行」がまさにその実践ステップです。日本企業のFP&A組織がどのような契機で起こり、どう進めるべきかをステップ論として明記しました。味の素やキリンのように経理財務部門に置くパターンもあれば、Ridgelinez社やSOMPOのように経営企画部門に置くパターンもあります。問題はどこに置くかではなく「いかに始めて成果を出すか」であり、大規模な富士通のFP&Aの組織変革の事例も詳しく盛り込んでいます。
ビジネスパートナーの資質を育むトレーニング、CFOへのキャリアパス
栗原:これからFP&Aを目指す人や、社内で人材を育成したいと考えているマネジメント層に向けて、メッセージをお願いします。
池側:第5部「FP&A人材としてのスキルを高める」では、これから専門職を目指す方にぜひ熟読していただきたいパートです。第11章のP&Gジャパンやユニ・チャームの事例では、入社時点で必ずしも完璧な会計の専門知識を求めているわけではなく、多様な部門間のローテーションを通じて「生きた事業の理解」を徹底的に深めさせていく、日本企業でも真似できる育成モデルを紹介しています。また、第12章ではキャリアの強力な武器となる「US-CMA(米国公認管理会計士)」や「公認FP&A資格(FPAC)」といった専門資格の活用法についても解説しています。
藤野:あらゆる部門のデータが集まり、経営トップと対等に渡り合いながら意思決定に関与するFP&Aというポジションは、間違いなく次世代のリーダーや将来のCFOを輩出するための最高の「登竜門」になります。
本書ではLIXILのCFOである藤田真理子氏のキャリア事例を取り上げ、数値を因数分解して経営者に「翻訳」する力が、いかに確固たる視座を形成したかを詳しく記述しました。さらに第6部では、これらすべての実務を強力に武装する「管理会計システム(Anaplanなど)」の思想と導入の進め方も解説しています。
栗原:書籍が多くの読者の方に届くといいですね。本日は貴重なお話、ありがとうございます。
