アジャイルに動くための選択。3つの事業化スキームと子会社設立
「FRONTIER DOJO」では、免許皆伝後の出口戦略として独自の「事業化スキーム」を構築している。これは最初から制度として完璧に用意されていたわけではなく、過去5年間で生まれた13件の案件と1件ずつ向き合い、試行錯誤する中で「3つのパターン」に体系化されていったものだという。
具体的には、外部のアクセラレーターの事業として立ち上げる「パターンA」、外部調達を含めて新会社を設立する「パターンB」、既存部署へ異動して事業を立ち上げる「パターンC」の3種類が用意されている。たとえば、社内の厳しい品質基準をクリアするのに時間がかかるような事業は、一度外に出してアジャイルに顧客検証を進められるパターンAが適しているなど、大企業ならではの制約を踏まえた柔軟な設計となっている。
Water Scapeの場合は「パターンB」を選択した。川崎氏にとっては「サントリーというCVCに対してピッチを行い、出資を取り付けて事業化の切符を掴んだ感覚」だという。現在はサントリーに籍を置きながら、出資を受けた連結子会社の代表として出向する形で事業を推進している。大企業のリソースを活用しながらスピード感を持って立ち上げる、理にかなったアプローチである。
1→10の壁を親会社と共に越える。大企業スピンアウトの未来像
新会社として2期目を迎えたWater Scapeは、現在「0から1」のフェーズを終え、「1から10」、さらには「10から100」へと事業をスケールさせる重要な移行期に入っている。川崎氏が直面している課題は、コンサルティングビジネス特有の「人がリソースの限界になる」という構造的な壁だ。
これに対し、サントリーも強力な後押しを想定している。松尾氏は「Water Scapeはサントリーの連結子会社であるため、本体から人を送り込む意思決定が比較的しやすい。今後の成長プロセスの中で、本社から人を送る動きになっていく可能性はある」とバックアップ体制を示唆した。
川崎氏は、自社を「水のある美しい風景を未来に引き継ぐという理念先行型の会社」と位置づけ、その理念をグローバルに広げていきたいと展望を語る。そして親会社との関係について、「Frontier DOJOという仕組みが継続するためには、『FRONTIER DOJO』発の事業が規模を拡大し、サントリーにとってメリットがあるという結果を示さなければならない」と覚悟を示した。
最後に、イベント参加者へのメッセージを求められた松尾氏は、「新規事業の取り組みは1社の中でやっていても、なかなかいいアイデアや制度には育っていかない」と切り出した。「自社で完結するのではなく、社外と繋がり、一緒に意見交換や取り組みを行うことでブレイクスルーしていくこともある。ぜひこうした機会をきっかけに、共に取り組んでいきたい」。そう呼びかけ、外部との共創の重要性を説き、講演を締め括った。

