部門経営の羅針盤「Playbook」とHRBPとFP&Aの同期
加藤:ここからは、NECの企業変革の中核である「部門経営」における「Playbook」、HRBPとFP&Aの連携について詳しく伺います。まずNECにおける「Playbook」の定義と運用の目的をお聞かせください。
渡辺:先ほどお話ししたとおり、以前は120ほどに細分化されていた事業部を「ITサービス事業」と「社会インフラ事業」という大枠に統合し、その下に「部門」を配置しました。この大括り化された部門を経営していくための共通指針・共通言語として作成したのが「Playbook」です。
「Playbook」には、2030年に向けた全社の中期経営計画を噛み砕き、各部門が目指す「ありたい姿(To Be)」の事業戦略、財務計画、HR戦略、実行プロセスが網羅されています。一度作って終わりのマニュアルではなく、環境変化に合わせてアップデートし続ける「組織の羅針盤」です。これがあることで、部門を超えた方向性の擦り合わせや、HR施策のベクトルを合わせることが可能になりました。

加藤:事業戦略(To Be)を軸にして、ファイナンス面を担当する「FP&A」と、人・組織を担当する「HRBP」が同期して動く仕組みになっているのでしょうか。具体的な連携のメカニズムを教えてください。
渡辺:例えば、従来の日本企業では、事業計画の数値(売り上げ・利益)と、人事側のヘッドカウント(要員管理)が独立して動いてしまいがちでした。新卒採用や定期異動が事業計画とは無関係に慣習で行われるような状態です。
NECでは、FP&Aが策定する財務計画の数値と、HRBPが設計する人材ポートフォリオ・ヘッドカウントを完全に連動させています。目標達成に必要な事業KPIや収益構造と必要な人材の「質と量」は背中合わせですから、同じ会議の場で両者を重ね合わせて検証しています。
「ビジネスコンダクター」に見る、戦略実行のための組織・職種再定義
加藤:「組織開発」の定義には2つ流派があると考えています。従業員同士の関係性を高める「共同体(感情・仲良し)」と定義する流派と、事業戦略を実行するための能力を整える「機能体(構造・プロセス)」と定義する流派です。そして私とNECさんは「機能体(構造・プロセス)」派ではないかと共感しています。「戦略を実行するための組織機能やプロセスの再設計」が組織開発として捉えられている点がきわめて本質的ですが、具体的な職種再定義の事例はありますか。
渡辺:象徴的なのが、BluStellarにおいて新しく定義した「ビジネスコンダクター」という職種・役割です。お客様の経営アジェンダを理解し、アカウント戦略の立案から課題解決までを担う「アカウントプロフェッショナル」と連動し、「ビジネスコンダクター」は、お客様の経営アジェンダを解くためのBluStellarシナリオを全体最適で統合・紐付けし、高付加価値なビジネスを強力にリードする役割として再定義しました。
ビジネスモデルを変えるためには、まず業務プロセスを変えなければなりません。そしてプロセスが変われば、当然必要なケーパビリティ(組織能力)や職種(ジョブ)が変わります。HRBPには「ビジネスコンダクターに必要なスキルレベルや人材ポートフォリオを全社でどう定義し、強化していくか」という最上流の組織機能設計から入ってもらっています。
阿部:業務プロセスの再定義にあたっては、現場のメンバーを代表する方々にも検討チームに入ってもらっています。上から指示されて「やらされる」のではなく、自分たちでプロセスの課題を見つけ、あるべき姿を自己決定してもらうアプローチ(組織人材戦略PJなど)をとることで、現場の納得感と当事者意識を高めています。
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