FP&AとHRBP、そして事業部門との“健全な対立”が生み出す事業推進力
加藤:FP&Aは主に「経営指標、効率性などの分析的視点」を重視し、HRBPは「人・感情・モチベーション・組織能力などの人間的視点」を重視します。同じ部門経営チームの中で、FP&AとHRBPの間で意見の衝突や健全な対立が生じることはありますか。

渡辺:ゴール(Playbook)は同じですが、アプローチが異なるため健全な議論は日常茶飯事です。むしろそれがなければ意味がありません。阿部さんや植田さんが、事業側の高い実行目標や変革を推進するスピードに対して、全体の組織変化の状態や社員の気持ちを現場で正しく捉え、社員の成長や適時適所適材の人材配置についても苦言を呈してくれるからこそ、事業部門の経営者としてのバランスの取れた意思決定ができます。事業責任者のイエスマンになるHRBPなら存在価値はありません。
阿部:業績データ(FP&A)とピープルデータ(HRBP)を掛け合わせることで、「利益率の低下」といった事象の裏にある現場の過剰負荷やスキル不足を構造的に特定し、対話のきっかけを作れるようになりました。「戦略からプロセスを起こし、課題をともに解決してくれる参謀」として、現場の信頼を獲得できるようになっています。
加藤:数字の裏にある課題が見えても、実際に現場を動かすのは簡単ではありませんね。利害がぶつかるような難しい局面で、HRBPは現場とどう向き合っているのでしょうか。
植田:低収益事業の構造改革といった「適応課題(利害のぶつかり合い)」に向き合う際も、事実と構造を示したうえで現場と対話し、痛みの再配分を乗り越えられるよう支援しています。また、ジョブ型人事制度を現場に実装する際も、現場のビジネスリーダーが自ら「組織設計書」を書いて組織や人材戦略の翻訳を体得できるようガイドラインを作成して伴走しました。現場の納得感を丁寧につくることが私たちの価値提供です。
加藤:先ほど渡辺さんから「事業責任者のイエスマンになるHRBPなら存在価値はない」というお話がありました。事業に深く伴走しながら、ときには苦言も呈する。お二人は、HRBPとしての立ち位置をどのように捉えていますか。
阿部:自身の立ち位置としては、「事業部寄りが51%、全社俯瞰のコーポレート部門の視点が49%」という絶妙なバランスを意識しています。日々のスピード感や熱量は9割方事業部に身を置いていますが、全社最適を見渡す49%の客観性があるからこそ、耳の痛い本質的な提言ができます。
植田:私は気持ちとしては完全に渡辺さんの部下として事業を勝たせるつもりで働いています。ただし、事業部門内に閉じこもってサイロ化しないよう、人事や全社的なピープル&カルチャーの視点を忘れないようにバランスをとっています。
2030年に向けた展望 と人的資本経営の第2幕へ
加藤:渡辺さんには、最新の中期経営計画にある2030年の「AIネイティブカンパニー」の実現に向けた展望とあわせて、FP&AやHRBPへの期待をお聞かせください。
渡辺:私は、AIは人の可能性を広げ、能力を拡張する力になると考えています。AIの活用によって人ができることの幅は広がり、スキルの面でもAIが補完・支援できることが増えてきます。
その中で、FP&AとHRは、コーポレート機能を支えるより大きな柱になります。コーポレートガバナンスの観点から企業の健全性を保つことはもちろん、事業の成長を後押しする重要な役割も担っています。
コーポレート組織が事業の現状を的確に捉え、時代の変化を先取りしながら事業の方向性を導く。その実現に向けて、HRとFP&AがAIネイティブとして自ら挑戦を重ねることができれば、その実践はBluStellarにとっての「クライアントゼロ」としての実践知となり、お客様へのAIネイティブ時代の価値提供の源泉にもなります。
加藤:さらに渡辺さんには、来る12月1日に開催されるBiz/ZineとHRzineの共催イベント「Business×HR Forum 2026」での登壇に向けた意気込みをお聞きしたいです。
渡辺:12月1日のイベントでは、慶應義塾大学の琴坂将広先生によるアカデミックな経営戦略の文脈を受け、NECがいかに「経営戦略と人材戦略の連動」を実動レベルで落とし込んでいるか、そのリアルな実践知をお届けする予定です。
加藤:コングロマリット企業において「経営戦略と人材戦略をいかにすり合わせ、実行に移すか」は、まさに多くの経営者やHRリーダーが喉から手が出るほど知りたいテーマです。12月1日のセッションは私も登壇しますし、NECのさらなる挑戦を心から楽しみにしています。本日は素晴らしいお話をありがとうございました。

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