注目案件を獲得する米国CVCに見られる「3つの特徴」
では、こうした注目度の高いAI/ML案件にアクセスできているCVCには、どのような特徴があるのでしょうか。CVCの戦略や目的は各社様々ですが、今回取り上げた複数のCVCに共通するのは、自らの投資姿勢によって「CVCに対する従来の先入観」を打破している点です。具体的には、以下の3つの特徴が見受けられます。
1つ目の特徴は、「CVCは親会社の意向に絶対従属する」という先入観を覆すような独立性を持っていることです。たとえばGV(旧Google Ventures)は、Alphabetを唯一のリミテッド・パートナー(LP)としながらも独立系VCとして運営されており、親会社の競合にあたるスタートアップに出資した実績もあります。運用資産は130億ドルに達しており[3]、「事業会社のベンチャー投資は規模が小さい」というイメージも当てはまりません。
2つ目の特徴は、「CVCはアーリーステージ限定で一回限りの投資を行い、評価額も抑えめである」という先入観に反し、高い評価額のラウンドにも積極参加していることです。Salesforce Venturesは2023年、まだ売上がほぼ立っていない時期のAnthropicのシリーズC(投資前評価額41億ドル)に初参加し、その後もラウンドをまたいで出資を継続しています。同社が参加したAI/ML案件のうち評価額上位3件(615億ドル〜965億ドル)は、すべてAnthropicへの投資です。リストに挙げた他のCVCを見ても、選定案件と全AI/ML案件の評価額中央値の開きは約4倍から14倍に達しており、高い評価額がつく注目ラウンドにも積極的に参加する姿勢を示しています。
3つ目の特徴は、親会社のバランスシート投資とCVC部門の役割を明確に切り分けることで、迅速かつ目的に合った投資を実現していることです。大規模な事業提携を伴うOpenAIやAnthropicへの投資はMicrosoft本体が行っており、CVCであるM12によるものではありません。M12は、Arcee AIのようなオープンウェイト言語モデルの開発者など、Microsoftの広範なニーズに合致する他のAI企業に投資を行っています。GoogleによるAnthropicへの出資も、GVではなくGoogle本体が行っています。
なお、注目すべき点として、AI/MLは多岐にわたる業界に影響を与える基盤技術であり、メディアの注目を集めるLLM(大規模言語モデル)企業だけに留まりません。PitchBookがAI/MLに分類した案件数において、CitiとCoinbaseは米国CVCの上位10社に入っています。彼らの投資先の一部では、AI/MLやビッグデータはプロダクトそのものではなく、事業を可能にする基盤技術として機能しています。自社のCVCが投資すべきAI/MLベンチャーは、多くの投資家が追いかけている案件と必ずしも一致するわけではないということです。
[3] GV「We support innovative founders moving the world forward.」



