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変革の羅針盤:WiLが探る日本企業の未来

「CVCは激戦のAI案件に入れない」は本当? 日本企業が投資を成功に導く“4つのポイント”

第4回

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 最先端技術の獲得や事業革新を目的としたスタートアップへの出資。しかし、「CVCは競争の激しい案件に入れない」と諦めている日本企業は少なくありません。CVCという属性だけで、注目されている案件へのアクセスが自動的に閉ざされるわけではないのです。本記事では、米国CVCの投資データを検証し、激戦のAI案件を勝ち取るために日本企業が事前にクリアすべき「4つの事項」を解説します。投資チームの独立性の明文化から、プレミアムを払う合意形成、担当領域の線引きまで。AI投資を単なる組織作りから、起業家に選ばれる「投資機能の構築」へと昇華させるための実践的な視点をお届けします。

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「CVCは激戦のAI案件に入れない」は本当か?

 「CVCは競争の激しい案件に入れない」というのは、よくある先入観です。意思決定プロセスの遅さやネットワークの弱さ、あるいは創業者がCVCに情報を共有することを嫌がることなどが、その理由として挙げられます。スタートアップがかつてないスピードで資金調達を進め、VCでさえ出資枠を競い合うAI時代においては、この溝は広がる一方ではないかと考えられがちです。

 しかし実際には、VCと同様に、CVCのポートフォリオでもAIの比重が急速に高まっています。2026年半ば時点において、米国CVCが参加した案件の54.2%、その調達額の93.6%をAI分野が占めており、いずれも過去10年の最高水準に達しています[1]。

 米国がAIの最前線にある今、米国に本社を置くCVCのAI案件へのアクセス状況を把握することは、日本企業がAI投資戦略を練る上で大いに参考になるはずです。

米国CVC10社の投資案件から読み解く「AI投資のリアル」

 米国は日本とは異なり、VC主導のスタートアップ・エコシステムが形成されており、投資家全体におけるCVCのシェアは僅かです。競争の激しい案件を獲得するには、他社CVCだけでなく、意思決定の早いVCとの競争にも勝ち抜かなければなりません。そのため、日本の大企業の間には「米国CVCであっても、注目される案件にはアクセスしにくいのではないか」という先入観が存在します。

 AI時代におけるその実態を検証するため、AI/ML分野で最も投資件数の多い米国CVC10社を抽出しました。そして、Forbes「2026 AI 50」およびBessemer「50 Physical AI」に選出された企業に対し、各CVCが米国で何社に出資したかを集計しました。さらに、各社が高い評価額のラウンドに参加できているかを調べるため、上記リスト選出企業への投資ラウンドの評価額中央値(Post-money)と、同CVCによる2023年以降の全AI/ML投資の評価額中央値を比較しました。

出所:PitchBookのデータに基づくWiLによる分析。シリーズの記載がない案件についてはVCラウンドの情報を補完。分析手法の詳細は記事末尾の「データに関する注記」を参照。本表はPitchBookのアナリストによるレビューを受けたものではありません。
CVC Forbes「2026 AI 50」または Bessemer「50 Physical AI」に選出された米国ポートフォリオ企業数 評価額中央値(Post):選定案件 vs 全AI/ML案件
GV(旧Google Ventures) 7社:Harvey(Series C–F)、OpenEvidence(Series B–D)、Safe Superintelligence(1st,2nd round)、SambaNova(Series E)、Sierra(Series E)、Thinking Machines Lab(1st round)、Waymo(Series D) 選定案件:60億ドル
全AI/ML:4.16億ドル
Samsung NEXT Ventures 6社:1X(Series B)、Dyna Robotics(Series A)、Field AI(1st round, Series A)、Figure(Series B)、Periodic Labs(1st round)、Perplexity(4th round) 選定案件:20億ドル
全AI/ML:1.70億ドル
Salesforce Ventures 10社:Anthropic(Series C, D, E, F, H)、Crusoe(Series E, Series F)、Dyna Robotics(Series A)、ElevenLabs(Series B–D)、Fal(Series C, D)、Glean(Series D)、Runway(Series C)、Skild AI(Series C)、Together AI(Series A, C)、World Labs(Series B) 選定案件:46億ドル
全AI/ML:7.75億ドル
NVentures(NVIDIA CVC) 13社:Abridge(Series C,D)、Bedrock Robotics(Series A,B)、Carbon Robotics(Series C,D)、Dyna Robotics(Series A)、ElevenLabs(Series D)、Fal(Series D)、Field AI(Series A)、Generalist(Series A,B)、Physical Intelligence(Series B)、Radical AI(2nd round)、Skild AI [2](Series C)、Suno(Series C)、World Labs(Series B) 選定案件:18億ドル
全AI/ML:4.24億ドル
Coinbase Ventures リスト該当企業なし n/a
M12(Microsoft CVC) リスト該当企業なし n/a
Intel Capital 4社:Field AI(Series A)、Figure(Series A–C)、SambaNova(Series F)、World Labs(Series B) 選定案件:23億ドル
全AI/ML:1.74億ドル
Citi Ventures 3社:Reflection AI(Series B)、Glean(Series D, F)、Rogo(Series D) 選定案件:47億ドル
全AI/ML:4.16億ドル
Databricks Ventures 5社:Fireworks AI(Series A, B)、Glean(Series D)、Perplexity(Series A, B)、Replit(Series D)、World Labs(Series B) 選定案件:10億ドル
全AI/ML:1.84億ドル
Cisco Investments 3社:Anthropic(Series E)、Thinking Machines Lab (1st round)、World Labs(Series C) 選定案件:100億ドル
全AI/ML:8.00億ドル

 このデータからは、いくつかの重要な事実が浮き彫りになります。

 最も重要な気づきは、「コーポレート投資家であること」自体は、競争の激しい案件へのアクセスを一律に妨げる要因ではないということです。一部の米国CVCは、Safe SuperintelligenceやThinking Machines Labへの初回ラウンドから、Anthropicへの複数ステージにわたる投資まで、あらゆる段階で争奪戦となるAI案件に参画してきました。

 また、これは米国の親会社を持つCVCに限りません。韓国のサムスンを親会社とするSamsung NEXTも、Physical AI分野で評価されている複数のベンチャーに投資しています。


[1]PitchBook「Fewer Deals, Bigger Bets: How Corporate Capital is Concentrating US AI Venture Activity」

[2]PitchBook attributed the Skild AI round to a different investor (Singapore based investor called nVentures); this was corrected manually on the author’s end.

次のページ
注目案件を獲得する米国CVCに見られる「3つの特徴」

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この記事の著者

Milana Kuzmanovic(ミラナ・クズマノヴィッチ)

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