なぜ、デザインプロセスを考える必要があるのか
「デザイナー」といえば ポスターなどのビジュアルや、家具などのモノを作る人であると一般的には考えられているが、第一回でも述べたように、この数十年の間にデザインが扱う領域は広く、より複雑なものとなった。デザイナーには、モノの見た目を良くすることだけではなく、それらがどのようなサービスや組織の中で使われるのかまで踏み込んで考えることが求められるようになってきている。
デザインとは本質的に、無駄を削ぎ落とし、課題を解決し、人々にとって意味のある経験を創り出すことである。かつて、デザインは1人の優秀なデザイナーの嗜好や判断に依拠して行われていたが、今はより協働的かつ戦略的なものに変わってきている。デザインという言葉自体も、デザインされた結果のみを指す名詞的なものから、どのようにデザインするか、という動詞的な意味も含むようになった。一部のデザイナーたちは、デザインするプロセスが適切な結果を導けるかどうかに大きく影響すると考えはじめ、そのプロセスを一層重視するようになっている。
もちろん、プロセスがなければデザイン出来ないということではないが、正しく行うことは難しくなる。デザインプロセスというフレームワークがあることで、制約条件を全て考慮しながら正しい課題に取り組み、ユーザーのニーズに沿った、かつ実行可能なアウトプットを導く可能性が高まるのだ。
また、一口にデザインプロセスと言っても、その中身は、目的や予算、リソース、そして関わるデザイナーによっても変わってくる。これまでにも様々なデザインプロセスが提唱されてきたが、その中でもよく知られているものに英国デザイン・カウンシルのダブルダイヤモンドと米国スタンフォード大学d.schoolのデザイン思考プロセスがある。ダブルダイヤモンドは、各フェーズにおいて発散と収束を繰り返すことが重要であるとし、d.schoolのプロセスではユーザーへの共感と早い段階からの簡易的なプロトタイプを用いたユーザーテストに重きを置く。
このようなデザインプロセスは、特定の分野や企業でとられているアプローチや哲学との兼ね合いによっても変わってくる。例えばソフトウェア開発の分野においては、アジャイル開発などと共存するプロセスが求められるし、事業開発においては、リーン・スタートアップモデルのようなフレームワークと組み合わせて使われる。
Designitでは、「戦略的デザインプロセス」と呼ばれる5つのステップからなるプロセスを用いて、クライアント企業が未来を描くサポートをしている。このプロセスを通して企業の戦略に沿うユーザーの新たな経験をデザインし、技術によって実現することでビジネスを成長させるのだ。