インタビュー 社会人が大学院で研究する意味

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宇田川先生が人気教授に訊く、MBAとは異なる、実践と理論の狭間に悩む社会人のための「研究の場」とは?

[公開日]

[語り手] 禹 宗杬 伊藤 修 柳澤 哲哉 [聞] 宇田川 元一 [取材・構成] 伊藤 真美 [写] 長谷川 梓 [著] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 金融 フィンテック FinTech MBA 働き方改革 労働経済学 ケーススタディ研究 社会人大学院 金融行政

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根源的なリベラルアーツと高度な専門知識を収斂──豊富な社会経験を持つ者が得られる「実践的な学び」とは

宇田川:それでは最後は経済学部長の柳澤哲哉教授に、埼玉大学経済経営系大学院の概要について伺いながら、当校の特徴や強みについて紹介していきたいと思います。

柳澤哲哉 教授(以下、敬称略):まず経済経営系大学院は、3年前に経済科学研究科と教養学部の大学院が共同して誕生した人文社会科学研究科内にあり、経済学・経営学などを扱う伝統のある社会人中心の大学院になります。

秋葉原にサテライトオフィスを持ち、夜間と土曜日に講義を行うというスタイルになっており、「働きながら学べる」というのが最大の特徴です。伊藤先生もおっしゃっていましたが、30代半ばと50代の2つの山があり、金融業界や官公庁、メーカー、サービス業の方も多いです。

豊富な実務経験を持ちながらも、理論的なものの不足を実感し、そうした普遍的なものと自分の実践的経験がつながるのか課題感を持っている人も多いです。さらに特徴的なところを言えば、MBAの取得者が多いこともありますね。

柳澤 哲哉埼玉大学大学院 人文社会科学研究科 柳澤 哲哉 教授 / 経済学部長

宇田川:そうなんですね。MBAホルダーが多いのは、どのような理由からなのでしょうか。

柳澤:MBAが全てそうだということではないですが、データをソフトウェアで統計処理して、レポートを幾つか出すという訓練が多いようです。そこで改めて修士から入り直して、研究論文レベルのものにまとめたいというわけです。また博士課程まで進む方が多く、大学教員になる人も多いのが特徴です。

宇田川:そうした高い水準の良質な研究ができる大学院ということですよね。各専門分野で体系化された理論や知識を体得していくのはもちろんですが、それ以上に教員や学生が共同で議論し、考えを出し合う中で、自分の持っているものをさらに深めるというスタイルなのが特徴的だと思いました。意外にそうしたことができる大学院は少ないように思います。

柳澤:ええ、いわゆるTipsによる実践ではなく、自分で考え、問題を見出し、解決策を見出し、推進していくという「真の実践力」を重視しているということなのでしょう。

宇田川:最近、ビジネスパーソンの方々と交流する中で、上司から「働き方改革をやれ!」「新規事業、オープンイノベーションをやれ!」とだけ言われて、どうしたらいいかわからないという話をよく聞きます。そうした方は“コンサル漬け”もしくは“MBA漬け”になりがちです。批判的な意味でははなく、どういう現象なんだろうかと。おそらく背景には、自身の問題について“整理して欲しい”という要望があるようです。

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柳澤:それは決してコンサルやMBAの問題ではないんですよね。自身の問題に気づき、整理することができれば、世の中のものは全てリソースになります。しかし、問題整理ができていない中でステップを飛ばしてビジネス書・研究書を見ても、ワークショップに参加しても、本質的な課題解決には繋がりません。要は「本質的な学び」が得られていないんです。

宇田川:「美学」と表する人もいますが、「本来何をすべきなのか」をしっかりと自分の中に持っている人は、問題の整理段階も実践においてもぶれる事がなく、ツールやメソッドにも振り回されずに使いこなしますよね。それがまさに「リベラルアーツ」であり、近年のビジネスパーソンの関心事になっているように感じます。それにしても、経済経営の世界と哲学など人文の世界は、なぜ分離してしまったのでしょう。

柳澤:もともとは一緒のもので、「社会をどうしたらよくできるのか」という命題に対して、歴史や哲学、社会学、経済学など、何を基盤に置くのかで分派したのだと思います。しかし、社会が成熟していくなかで、根源的な欲求に応え、社会的課題の解決策を考えると、分派したものが再度収斂していくのかと感じています。

前述したように、埼玉大学大学院人文社会科学研究科も、人文科学と社会科学(経済・経営)が3年前に融合したものです。それがまさに「収斂」を体現していると言えるでしょう。そうした環境下で、大学院生自身が主体となれるよう、「あるべき姿」を指針として社会的課題を捉え、問題を再整理する支援を行い、その上で理論やツールなどのリソース提供を行います。ぜひとも、当大学院で「実践のための学び」の機会を得ていただければと思います。

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