CVCの投資領域は「破壊的イノベーション」
事業会社から投資することを考える場合、その手法はCVCに限定されるわけではなく、M&Aや資本業務提携などの選択肢があります。その中で、あえてCVCから投資をすることが、最良の選択となる時の投資戦略・手法はどのようなものなのでしょうか。
結論からいうと、CVCの投資は、投資戦略全体の中で「破壊的イノベーション対応」を受け持ち、「シナジーよりキャピタルゲイン(≒事業成長性)を重視」した投資判断を行い、「独立した意思決定権」を持ち、「複数投資によるポートフォリオ構築が可能な規模」で運営するという戦略・手法が最適だと考えています。これからその理由について述べていきます。
はじめに投資の目的から考えていきます。ここでは「イノベーションのジレンマ」という理論を使って整理をしたいと思います。Clayton M. Christensenが提唱したイノベーションのジレンマでは、既存事業は、その事業の延長線上にあるイノベーション(持続的イノベーション)を生むことができても、既存事業自体を破壊するような革新的なイノベーション(破壊的イノベーション)は、自己否定につながるため生むことが難しく、その結果、他社が破壊的イノベーションを生み出し、既存事業が破壊されてしまいます。
わかりやすい事例として音楽流通がありますが、音楽流通はレコード、CD、DVDという媒体を中心に発展してきましたが、現在では、iTunesのような配信ビジネスに市場の多くを奪われてしまいました。この事例では、レコード、CD、DVDという発展は持続的イノベーションであり、iTunesのような音楽配信は破壊的イノベーションにあたります。そして、音楽配信のような破壊的イノベーションは既存の音楽事業者から生まれるのではなく、Appleのような全く違う分野の事業者から生まれています。
これを踏まえると、事業会社は持続的イノベーションに取り組むのはもちろんのこと、破壊的イノベーションにも対応していく必要があり、それぞれのイノベーションに適した投資戦略を考えていく必要があります。