連載・コラム アマゾン流、新規事業の“考え方”

なぜ新規事業には「ダイバーシティが必須」なのか──同質性ではなく多様性でアマゾンが成長した理由

第6回

 今回は、新規事業にとっても重要な「ダイバーシティ&インクルージョン」についてご説明します。前回の「リーダーシップ 」でお話ししたとおり、アマゾンでは全員がリーダーであるという考え方のもとで社員は行動しています。したがって、年齢や性別によって区別・差別はなく、できる仕事が違う・就けるポジションが違う、ということはありません。そのような環境があっても、ダイバーシティ&インクルージョンに対する取り組みには大きくコミットして、投資をしております。ここでは、筆者の経験を含めて、その具体的な取り組みをご紹介します。

[公開日]

[著] 太田 理加

[タグ] ダイバーシティ リーダーシップ 企業戦略 人材育成 女性活躍推進

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なぜ新規事業で「ダイバーシティ」が鍵となるのか

 そもそもなぜ「ダイバーシティ」が新規事業にとって重要なのでしょうか。大きくは3つあります。

(1)新しく作る商品やサービスそのものをよくするため

 当たり前すぎることですが、新しい商品・サービスのお客様の半分は女性。それなのに、女性の意見や見方が反映されていない商品は、お客様から支持を得るのは当然ながら難しいです。もちろん、男性向け・女性向けの商品やサービスであっても、さまざまな視点があるほうが良いものになります。

 私が運営している女性向けの月額制ジュエリーレンタルサービス「スパークルボックス 」でも、男性の意見で1つ機能を追加したことがあります。ある男性が「これ、本当にいいサービスですよね。ぜひ、彼女に使ってもらいたい。プレゼントを贈るとき、本当に気に入ってくれるか悩むんですよ。これなら、交換し放題だし、スタイリストさんが選んでくれるし、彼女も喜ぶ」と意見をくれました。彼のこの意見によって「ギフト」という機能を取り入れ、スパークルボックスの月額サービスを家族や友達・恋人にプレゼントできるようにしました。この機能追加が素晴らしかったのは、お客様の層を男性にも広げ、対象とするマーケットも大きくしてくれたことです。

(2)新しく作った商品・サービスへの共感を生むことができること

 お客様は商品やサービスそのものだけを見ているわけではありません。それを提供する人、そして、その商品やサービスの裏にあるストーリーを大切にします。特に1980年以降に生まれた「ミレニアル世代」やそれにつづく世代には、ダイバーシティを重んじ、自分の価値観に合うなどの共感を大切にしていると言われています。このような価値観の変化があるなかで、偏ったグループで開発された商品やサービスは受け入れられにくくなります。

 ダイバーシティとは違いますが、お客様が商品やサービス以外で、どこまで見ているのかという例を紹介します。スパークルボックスを利用されているお客様に実際にお会いしてお話を聞いたところ、「創業者のイメージとしてITが強すぎてどうかと思っていたけど、今日会ってファッションが好きだと分かって安心して使える」と言われたことがあります。この件により私も自身の見せ方ということを考えるようにもなりました。お客様はそのサービスに携わっている人までも見ているのです。

(3)さまざまな価値観を持った人が集まり、新しいアイデアが生まれやすくなる

 最近、オリンピック・パラリンピック大会組織委員会のトップが、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言したと大きく報じられました。理事会の実際は私には分かりませんが、確かに、同質・均質性の高い組織は、とても効率的だと思います。しかし、効率だけでは、新しいものは生まれません。色々な考え方があって議論を尽くすと、イノベーションが生まれやすい環境が形成されます。

 たとえばアマゾンでは、日本の新規サービスを作るプロジェクトにも、外国の方もプロジェクトメンバーになることが当たり前です。ただ、日本のお客様のことを知ってもらうための説明を英語に通訳する必要があり、その分時間もかかります。それでも、多様性のあるチームだと考えてもいなかった新鮮な意見が出たり、一歩ひいて見ることができたり、シンプルな解決法が出てきたりなど、費やす時間以上のメリットが生まれます。

ダイバーシティ

 日本は効率化が得意だと言われていますが、やはり効率化だけでは成長の限界があり、イノベーションを起こさないと衰退しかありません。ダイバーシティ&インクルージョンが、新規事業などのイノベーションを起こすための鍵になる。多くの方が共感できることだと思います。

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