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テストしないものはリリースしない──東京都副知事・宮坂氏が語る、ユーザー起点の行政「シン・トセイ」

RESEARCH Conference 2022 イベントレポート Vol.1

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 より良いサービスづくりの土壌を育むためにデザインリサーチやUXリサーチの実践知を共有し、その価値や可能性を広く伝えるイベント「RESERCH Conference 2022」。2022年5月28日に開催された同イベントから、東京都副知事・宮坂学氏による基調講演「行政も使いやすいデジタルサービスが作れることを証明したい」をレポートする。
 都は、2021年9月に「ユーザーテストガイドラインVer1.1」を策定。「テストしないものはリリースしない」を合言葉に、誰もが使いやすく満足度の高いデジタルサービスの提供に向けた取り組みを進めているという。UXの低さが非難の的になることも多い行政サービス。彼らが生まれ変わるために取り組んでいることやその考え方は、一般企業のサービスづくりにも通じるはずだ。

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“脳内妄想”でサービスを作っていないか

 窓口の行列、専門用語ばかりでわかりづらい書類など、デジタルサービスに限らず、行政サービスのUI/UXの低さはたびたび指摘される問題だ。東京都のデジタルサービスも例に漏れない。都が海外主要5都市と比較した調査でも、デジタル化された行政手続きの利用率、その満足度とも大きく下回っている。

 だが、2019年に副知事になって以来、宮坂氏が感じているのは「職員も使いやすいデザインのサービスを作りたいと思っている」ということ。それにも関わらず、四方から「使いづらい」と酷評されてしまうのは、「従来の行政サービスが、脳内妄想に基づいて作られていたから」であると宮坂氏は言う。

Yahoo! JAPAN時代に宮坂氏が学んだこと

 宮坂氏が前職・Yahoo! JAPAN時代に手がけたサービスのひとつにプロ野球の「Yahoo!一球速報」がある。約20年経った今なお現役(※現在はYahoo! JAPANの「スポーツナビ」内サービス)だが、起案した当時はまったく新しいサービスだったため、どのような見せ方をすれば良いのかについて参考にできるものがなかったという。

 そこで宮坂氏らは、表参道オフィス(当時)からほど近い神宮球場に足繁く通うことに。制作中の画面を見せるなどして、プロ野球ファンから意見をもらい、「ユーザーのペルソナを自分の体に入れていきました」。

 利用者の声をサービスづくりに生かす宮坂氏の姿勢は、「Yahoo!オークション(ヤフオク!)」にも通じている。

 サービス開始当初は詐欺やいたずらが横行し、利用者からの問い合わせの99%が苦情という惨状だったが、ここでもモニターを募集し、利用者の声を直接聞くことで、その後の改善につなげた。モニター調査にあたっては、当初非難の嵐に晒されるものと覚悟していたという宮坂氏。だが実際に利用者に会ってみると、7割近い人は建設的な意見をくれた。

「考えてみれば当たり前ですが、わざわざ(モニターにまで)来てくれるのは、サービスをすごくよく使ってくれている人たち。我々はひょっとすると妄想で、お客さんのことを怖いとか、恐ろしいと考えていたのではないかと、すごく反省しました」(宮坂氏)

 サービスを作るにあたっては、このように実際にそのサービスを使うユーザーに会って意見を聞くこと、使ってもらったデータをつぶさに見て改善すること、さらには「自分が世界一のヘビーユーザーである」と言えるくらいに(類似サービスを含めて)使い倒すことが不可欠であると宮坂氏は言う。そうしなければ、実際にそのサービスを使う利用者にとっての使いやすさなど、わかりようがないからだ。

 こうした考え方は、民間のウェブサービス開発の現場ではもはや常識と言えるが、「これまでの行政では、脳内妄想でサービスを作ってしまったり、利用者を見ていなかったりして、徹底できていなかった」。そのことが、職員の努力の甲斐なく、使いづらいサービスを量産してしまっていた大きな要因ではないかと宮坂氏は言う。

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鈴木 陸夫(スズキ アツオ)

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