サクセッションプランは経営者が行い、人事に任せない
田中弦氏(以下、敬称略):今はどの会社も「サクセッションプランをやらなきゃ」という機運にはなっていますが、比較的、上手くいっている会社の特徴などはありますか。
松田千恵子(以下、敬称略):上手くいっている会社さんは、オペレーションが上手い人が上がってくるということと、社長の後継者を作るということとは全く別の話だということをまずは理解します。そして、後者のためのマネジメントトレーニングが必要だということを認識するんです。
その上で、トレーニングは人事部主導ではなくトップ主導にし、外部の目も入れるということをやります。それは外部講師を呼ぶということではなく、社外取締役にも見てもらいながらやっていくということです。そして最後に、そういう話を指名委員会できちんと議論します。
これらが揃うと初めて「マネジメントトレーニングしています」と言える状態になって、実効性のある経営人材育成ができるようになるのではないでしょうか。
田中:どの部門がサクセッションプランを担うのかという課題ですが、人事部が経営を教えるのは難しいということですよね。
松田:はい、その通りです。人事部が管轄する研修の延長線上でやっているところは、あまり進展が見られませんね。
経営人材プールには50代ではなく、30代を
田中:なるほど。そうやっていくとマネージャー以上の育成は変わっていきそうですが、その下は相変わらず新卒採用をしてジョブローテーションでジェネラリストをたくさん育成していく……というやり方が変わらない気がします。これについては議論されているのでしょうか。
松田:その点では、「経営人材育成において年齢で区切るのをやめましょう」と言っています。
指名委員会に出てくるサクセッションリストには、社長の後継として準備ができているそれなりの年齢の人しか載りません。でも、日本企業は内部登用が多いですから、その次や次、さらにその次の候補についても議論しておかないといけないですよね。
その人材プールとして50代の人を選んでいたら、そこから経営を学んでも遅いでしょう。MBAをイチから学んで終わる頃には、役職定年になってしまいます。私が社外取締役をやっているところでは、最近は30代が人材プールに入ってきています。そうやって経営人材プールが一般層にも伸びていくと、「経営をやりたい」と思っている人をうまく吸収できます。
このときに大事なのは、1回リストに入って駄目だったときに失敗の烙印を押さないことです。一旦は外すけれど、またチャレンジできる状態にしておくことが大事です。