VUCAの時代のイノベーションに欠かせないもの
宮森:素晴らしい技術を持っている会社さんに見られる傾向ですが、東レさんの社員は、どちらかというと「権力格差」が高い傾向にありますね。
髙林:技術の面もあるかもしれないし、工場というのはピラミッド組織になりがちですから。その意味では、東レの文化は東南アジアと相性がいいといえます。
宮森:なるほど。東レさんで研修を始めて2年目くらいから、外国人の幹部の方にも参加していただいています。その中でCQのアセスメント(ホフステードCWQアセスメント)も受けていただくのですが、皆さん「不確実性の回避」のスコアがすごく高いんです。(世界の中でも「不確実性の回避」が高い傾向にある)日本人と比較しても、すごく高くて驚きました。
東レさんの中で仕事をするには、「ここを落としてはいけない」という確固たるプロセスがあって、きちんとオーガナイズされた中で物事を進めなければいけないのだと誰もがおっしゃっていたのが印象的でした。
髙林:それに合わせるというのが、日本のグローバル企業で成功するポイントだったわけです。東レは設備産業で、設備を作るのに100億円単位のお金がかかるし、3交代勤務で動かし続けなければなりません。その点ではアジャイルにはできないんです。
宮森:世界中でそのやり方にならって、ビジネスはうまく回っていたわけですよね。それでも、「日本の普通は、他国では普通ではない」と次期経営リーダーの方々に気づいてほしいと思われたのはなぜですか?
髙林:同質の人たちがある一つの目標に向かって、ピラミッド型の組織で一気に動くやり方は、過去には非常に効率的でした。ところが今は、VUCAの時代と言われるように先行きが不透明ですし、少子高齢化とデジタル化が世代間のギャップを生み出しています。特にこの1〜2年は生成AIが普及し始め、強烈に環境変化が進んでいます。時代が大きく変わる中、環境に合わない組織は滅びてしまいます。イノベーションを起こして変革していかないと成長できません。
イノベーションを起こすためには、個人としても過去の成功体験にとらわれずに色々な視点を持つ必要があります。それができなくても、他の人たちの異なる視点を認める必要があります。これがインクルージョンということだと思います。