親の介護経験と取引先の声が結びついた初期アイデア
──応募したアイデアはどのようなものでしたか。
新井:応募したアイデアは廃棄装花の利活用に取り組むものです。
きっかけは2つあります。1つ目は、コロナ禍で介護施設に入所している母に花を届けることができなくなったという経験でした。
母はかつてお花の師範をしていました。今は認知症でいろいろなことを忘れてしまっているのですが、季節のお花を届けると目をキラキラさせて触るんです。それがバリバリ働いていた頃の母の姿と重なって、私にとってお花は特効薬のような存在でした。
ところがコロナ禍で面会が禁止になり、すぐに枯れてしまう生花を施設で預かるのも難しいということで、お花を届けられなくなってしまいました。それが悲しくて、長く飾っておけるようなお花はないだろうか、ということを前々から考えていたんです。
2つ目のきっかけは、JTBとして関わりのある結婚式場から伺ったお悩みです。
ハネムーンで弊社をご利用いただけるよう、国内の式場にセールスにいく機会があるのですが、その時に「挙式で使われる装花は、その後どうするんですか?」と聞いてみたんです。すると、「お持ち帰りを推奨しているのですが、半分以上は捨てられています」というお話で。SDGsの意識も高まっていますから、挙式する方々からも「捨てずになんとかできませんか?」というお声があるそうです。ドライフラワーにすることなども考えてはみるけれど、そのスキルもないし手間もかかるので難しいとのことでした。
これらのきっかけが合わさって再活用のアイデアが生まれました。ですから、最初は式場で廃棄されてしまう装花を活かして介護施設にお届けすることを考えていたんです。
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多くの賛同を得られたアイデアの検証を開始
──その後、どのように企画を練り上げていったんですか。
新井:ファーストステップは事業理念に共感して参加してくれた4人の社員と共に、ニーズ調査、競合分析、ターゲット選定、PoC計画策定を行い、仮説の精度を上げていきました。
──新井さんの提案に対する社内の反応はどうでしたか。
新井:事業理念やSDGsにつながる取り組みに共感してくれる方が多かったです。「ツーリズムラボ」の運営をしている事業開発担当のマネージャーにも、「このアイデアは誰も不幸せにならない。そういうプランだから応援しがいがある」と、後ろ盾になっていただきました。
その中で、介護施設や医療機関にお花を届けるというのはさまざまなウイルスなどを持ち込む可能性などもあるということで、難しいことがわかってきました。一方で、企業に届けるというアイデアが出てきたんです。もともと花を飾る習慣がある企業さんはもちろん、SDGsという観点から、あるいは社内の環境改善のために、お花を取り入れてみたいという企業があるんじゃないかと。それで法人向けの卓上装花というものを考え始めたところから、STUDIO ZEROの和佐田さんに入っていただきました。