パーパスとバリューの浸透に向けた取り組み
宮森:お二人は、パーパスとバリューの浸透に非常に力を入れていると話されていました。しかし、会社のパーパスと自分のパーパスを100%一致させなければならないと考える人もいるのではないでしょうか。
髙橋:「パーパス探求カフェ」というワークショップの最後に、「『自分のパーパス』と『会社のパーパス』を表す丸をそれぞれ描いてください」とお願いしています。すると、すべての丸を重ねて描く人はほとんどいません。少し重なっている人が多いですが、自分の丸の中に会社の丸が完全に入っている人、あるいはその逆の人もいますし、離れた丸を描く人もいます。
今井:中には、「2つ描いてください」と言っているのに、たくさん丸を描く人もいますね。
髙橋:いろいろな考えが見えてくるのがおもしろいですね。いつも最後に「なぜこれをやっているのかというと、僕は会社と従業員が共に依存し合っている関係が好きではないんです。『会社はみんなのパーパスを実現するための乗り物であり、自分のパーパスを実現するためにレゾナックを利用するんだ』ということを、よく噛み締めて考えてほしいんです」と話して終わっています。
宮森:すごくかっこいいですね。普通はなかなか言えないことだと思います。
今井:私たち自身がそうやって仕事をしてきたから、本当にそう思っているんですよ。
宮森:お二人のお話を伺っていると、すごく知的な誠実性を感じます。「安心して話していいんだよ」というだけでなく、「何のためにこれをやっているのか」「なぜこれが必要なのか」といったことに真摯に向き合っていらっしゃるなと思いました。
髙橋:私のモットーの一つに「従業員に嘘をつきたくない」というものがあります。たとえば、ある事業が厳しい状況にある場合、無理に「絶対大丈夫」と言い続ける経営者もいますが、それはしたくない。正直に「ここはボーダーラインだから注意した方がいい」と伝えるべきだと思っています。
今井:それはとても大事なことです。日本の経営者は「嫌われたくない」という心理が働いてしまうことがありますが、上の立場になるほど厳しい決断と向き合う必要があります。それが、組織の健全性を保つ上で欠かせないのです。