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「新規事業提案制度」事務局運営のリアル

NTTドコモが築く社内起業文化の“真価”──社員の挑戦を後押しする制度・事業部連携・トップのコミット

第4回 ゲスト:NTTドコモ 原尚史氏

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3つの起業事例に見る“理念”の実装

イノベーション鈴木氏(以下、イノベーション):前編では「起業家ファースト」と「オープン」の理念に基づいたdocomo STARTUPの制度設計についてお話を伺いました。

 後編では、具体的な成功事例や運営上の工夫について掘り下げていきたいと思います。まずは、これまでに生まれた代表的な事業についてご紹介ください。

原尚史氏(以下、原):代表的な事例としてヘアアイロンのレンタルスポット「ReCute」を提供するReCuteをご紹介します。これは、スマートフォンアプリを通じて、商業施設などの女性用化粧室で、いつでもどこでもその場でヘアアイロンをレンタルできるサービスです。リードインベスターとしてポーラ・オルビスホールディングスのCVCであるPOLA ORBIS CAPITALが参画し、将来的な事業連携も視野に出資いただいています。また事業会社連携という観点では、小田急電鉄、京王電鉄、東急グループなど、商業施設を運営する企業との協業を実現し、渋谷ヒカリエや恵比寿ガーデンプレイス、関西ではルクア大阪をはじめ、全国に23施設で43スポットを展開してます。

 もう1つの事例として、生成AIサービス「Stella AI」を提供するSUPERNOVAがあります。これは、ChatGPTやClaude 3.7などの有料生成AIサービスを統合し、月額980円からの利用を可能にしたサービスです。事業会社連携としては、ドコモが通信料金プランとの連携により「Stella AIセット割」を提供しています。ドコモがインベスターとして参画するケースと、事業会社として関わるケースがありますが、いずれもオープンな形で取り組んでいます。

 3つ目の事例は、教育分野で事業を展開するRePlayceです。リードインベスターはニッセイ・キャピタルで、純粋な投資家として参画いただいています。ドコモの新規事業としてスタートしていた「はたらく部」に加え、鹿島山北高等学校や鹿島学園高等学校といった通信制高校のサポート校として「HR高等学院」を4月に設立しました。ドコモは教室提供やPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)講義の開発を共同実施しています。

イノベーション:通信事業との連携で「Stella AIセット割」を実現されている点は非常に革新的ですね。過去を振り返ると、NTTドコモやNTTドコモ・ベンチャーズの起業家が本業である通信事業との連携を実現するのは難しかったケースが多かったと理解しています。この壁を突破されたのは大きな進化ではないでしょうか。

:確かに、この領域は非常に難易度が高い部分だと私も感じています。

イノベーション:本業のコア事業に社内発ベンチャーが関与するという事例は、日本企業では極めて珍しいと思います。どのようにこの連携を実現されたのでしょうか。

:SUPERNOVAを起業した木本東賢さんは、以前ドコモで料金プランの設計に関わっていた経験があります。また、ReCuteの代表である山下萌々夏さんにはNTTコミュニケーションズで法人営業の経験があるなど、社内の意思決定の仕組みや文化を知っていること、培った知見や人脈を活用したことが連携実現の一因となっています。NTTドコモグループという組織で培った知見や人脈が、こうしたパートナーシップの構築に活かされていると考えています。

株式会社NTTドコモ 経営企画部 事業開発室長 原尚史氏
株式会社NTTドコモ 経営企画部 事業開発室長 原尚史氏

イノベーション:それは素晴らしい循環だと感じます。また、多くの企業が抱える課題として、新規事業の撤退判断の難しさがあります。一度開始したプロジェクトは企業の看板を掲げている以上、継続せざるを得ないという暗黙の圧力が働くケースが多いように思いますが、docomo STARTUPではどのように対応されていますか?

:当制度では「資金が尽きたら終了」というスタートアップの自然淘汰メカニズムをそのまま取り入れています。通常18ヵ月程度のランウェイ資金を調達して事業を開始し、その資金が枯渇すれば自動的に事業は終了するという明確な基準があります。市場からの支持や追加投資がなければ事業継続は困難になるという、明確な終了時点が設定されています。顧客から受け入れられれば事業は継続し、そうでなければ終了するという、事業の自然な評価サイクルが働く仕組みになっているのです。

イノベーション:多くの企業では年度単位の予算管理に縛られがちですが、バーンレート(資金消費率)による管理は理に適っていますね。この明快な退出基準があることで、起業家側も投資家側も、より本質的な事業価値の創出に集中できる環境が整うのでしょう。

NTTドコモ 原尚史氏も登壇!

6月13日に開催される「Biz/Zine Day 2025 June」では、本記事でお話を伺った原氏も登壇。NTTドコモ発スタートアップRePlayceの山本氏とともに、大企業からの起業家の輩出についてディスカッションします。セッションでは参加者からの質問にもお答えする予定です。オンライン(ライブ配信)とスタジオ観覧のハイブリッド開催です。ぜひご参加ください!

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この記事の著者

皆本 類(ミナモト ルイ)

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