営業利益の源泉は「人」。生産性のばらつきを可視化するには
池側:現場の方々にとって、慣れない分析業務は負担も大きかったのではないでしょうか。
芥川:正直、最初のアンケートではネガティブな意見もありました。しかし、あえて異なるキャリアを持つメンバーを混ぜてチームを組ませたことで、化学反応が起きました。人事は「人の動き」から、事業側は「売上」から数字を見ますが、それらが合わさることで多角的な気づきが生まれます。研修を通じて課題を構造化するスキルも磨かれ、組織の縦割りを排した「横串」の連携が強化されていきました。
山本:所属部署の業務範囲を超えて課題感を持つ意識の高いメンバーが多いことも幸いしました。FP&A活動については、私が1年目は伴走し、2年目は現場にバトンタッチして私は見守り役にまわる。この「伴走型」の育成が、自走する組織を作るポイントだと考えています。
池側:卸売業において、利益創出のために最も注力して分析している指標は何でしょうか。
山本:「生産性」についてです。メディアスグループ全体の販管費の6割以上は「人件費」です。2026年6月期中間決算でも、167億円の販管費のうち105億円を人件費が占めています。つまり、売上総利益の源泉は「人」にあります。
しかし、医療機器卸の営業活動は、院内の在庫管理や手術への立ち会いなど多岐にわたり、従来はブラックボックス化していました。そこで私たちは、営業担当者ごとの「生産性」をミクロに可視化するレポートを作成しました。不採算得意先への注力状況や、立会業務の削減余地などを分析したのです。これにより、個人の生産性の「ばらつき」が明確になり、優秀な担当者のベストプラクティスを共有したり、マネージャーが具体的なアクションプランを検討したりできる土壌を整えました。
トップのコミットメント、M&A後の嫌われないコミュニケーション術
池側:営業活動にデータでメスを入れると、現場からの反発を招きやすいですが、その点はどう克服されたのですか。
山本:社長のコミットメントが明確だったことが最大の要因です。社長方針の中で「FP&A機能を活用していく」ことが明文化されており、全社的なプロジェクトとしての認知が浸透していました。また、現場の感覚が客観的な数値として可視化されることで、「むしろ管理しやすくなった」と歓迎する営業マネージャーも増えています。
池側:貴社の成長を支えるM&Aですが、買収後の統合プロセス(PMI)においてFP&Aはどのような役割を担っていますか。
芥川:当社は毎年ほぼ1件以上のM&Aを実行しています。買収先の多くは、予算統制やシステムが未整備なケースが少なくありません。急に「ルールに従え」と強制しても強い拒否反応が出ます。ここで重要なのが、FP&A的なアプローチです。「こう分析すれば、もっと利益が出ますよ」という提案から入るのです。利益が出ることを嫌がる経営者はいません。FP&Aを通じて事業への理解を示し、「課題の共有」からスタートすることで、スムーズにグループの管理体制へと移行させることができます。

