経営戦略論に沿った分析プロセスをAIに実装する
続いて、NTTドコモビジネスの松岡和氏が、知財業務における生成AI活用の具体像と、同社が実践する戦略業務への適用事例を解説した。
同社では、自社の強みであるコアコンピタンス領域と、競合他社の出願状況を技術マップ上に可視化し、自社が差別化すべき勝ち筋の領域に対して持てる資源を集中投下している。「今年は何件出願する」という具体的な特許出願KPIを戦略的に立てて実行することで、意味のある競争優位性を確立しているのだという。
「経営戦略論に沿った分析プロセスを生成AIに実装しています。具体的には、特許情報、市場・競合情報、技術動向、政策・規制、社内情報といった多角的なデータをAIにインプットし、まずは『3C分析』を行って市場で勝てる条件であるキーサクセスファクター(KSF)を特定します。その上で、さらに『VRIO分析』を適用し、他社にはマネができない独自の価値を顧客に提供する中核能力、すなわちコアコンピタンスを特定し、戦略を策定します」(松岡氏)
同社では、自社の強みであるコアコンピタンス領域(認識・センシング・フィードバックなど)と、競合他社の出願状況を技術マップ上に可視化し、自社が差別化すべき勝ち筋の領域に対して持てる資源を集中投下している。「今年は何件出願する」という具体的な特許出願KPIを戦略的に立てて実行することで、意味のある競争優位性を確立しているのだという。
ルーチン業務はほぼ消滅。米国で先行する「静かなリストラ」
このようにAIによる戦略策定が高度化する一方で、グローバル市場、特に米国市場では、AIエージェントの浸透がドラスティックな組織・雇用の構造変化を引き起こしている。田丸氏は、米国IBMが2025年5月に発表した社内AIエージェント「AskHR」の事例を紹介した。
「IBMでは、人事部門(HR)の数百名分の業務をAIエージェントに置き換え、ルーチン人事業務の94%を自動化しました。これにより約8,000名規模のバックオフィス削減が報じられています。同様に、EdTech企業のDuolingo(デュオリンゴ)では、契約社員を段階的に廃止する『AI-First』全社方針を宣言し、新規採用は『自動化不可能と証明できた場合のみ』に制限しています」(田丸氏)
これは、派手な大規模レイオフという形ではなく、Duolingo型のような「自然減+AI代替」による、統計上は見えづらい「静かなリストラ」がグローバルで主流化していることを示している。今後、影響は現場の事務職だけでなく、意思決定を担う中間管理職層の提案・調整・承認業務にまで波及し、AIを使いこなす少数の高付加価値人材と代替される多数の中間層という「二極化」が急加速すると田丸氏は警鐘を鳴らした。
