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第一人者たちが語る、知財業務AIから戦略領域AIへの進化──知財AIオーケストレーションとは

LexisNexis PatentSight+ Summit 2026 レポートVol.3:パネルディスカッション「知財業務AIの次へ ── 戦略領域へのAI活用」

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知財AIオーケストレーションにおける「奏者」と「指揮者」

 オムロンの奥田武夫氏は、知財業務に関して生成AIの導入が完了した後に企業が直面する課題として、「各AIエージェントの能力を正しく発揮させること」と「人間とエージェントがうまく協働すること」の2点を挙げた。

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オムロン株式会社 ストラテジックR&D本部 Principal Intangible Asset Strategist 奥田武夫氏

 同氏はこの状態を「知財AIオーケストレーション」と呼び、知財人材は個々のエージェントを使いこなす「奏者」から、エージェントを束ねる「指揮者」へ変わらなければならないと訴えた。

「従来のGPT-4以前の環境では、細かい手順指定や誘導型プロンプト、ルールの詰め込みといった『指示の技術』が奏者(ユーザー)に求められました。しかし、近年のGPT-5.5以降の環境では、ゴールを明示し、成功条件と制約のみを提示すれば、AIが自律的に最適なプロセスを推論してタスクを遂行します。つまり、人間側には、経営課題や事業課題を正確に理解し、それらと連動した有効性のあるゴールを設定する『設計力』が問われているのです」(奥田氏)

 奥田氏の提唱する「指揮者」の役割とは、AIエージェントをツールとして消費するのではなく、「ひとりの人財(メンバー)」として混成チームに位置づけることだ。誰に(どのエージェント、あるいはどの人間メンバーに)どんな仕事を割り振るかという業務マネジメントを行い、人間とAIのそれぞれの特性を踏まえた一貫性のあるマネジメントを実行することこそが、知財組織の新たなコアケイパビリティになると解説した。

普遍的な物差しと新しいスキルの融合、相手を動かす「EQ」

 最後に、これからの知財人材が身につけるべき具体的なスキルセットについて、松岡氏は伝統的な知財スキル標準という「普遍的な物差し」を維持しつつ、次の3つの新スキルを掛け合わせる必要性を提示した。

  1. AIを動かす設計力:入力・分析プロセス・出力を戦略的に設計し、AIに自律的な思考を実行させる能力
  2. 協働を進める力:関係者を巻き込むためのファシリテーション能力や、自社のコア技術を守りつつパートナーシップを拡大する信頼関係構築力
  3. 事業価値の創出力:知財・無形資産を起点とした事業・経営戦略の策定、および知財ROIの定量化による売上・利益貢献の可視化能力

 さらに、これらの専門スキルや戦略的思考を、組織の意思決定層や事業現場へ届けて「実際に相手を動かす」ための源泉として、中村氏は「エモーショナルインテリジェンス(EQ:こころの知能指数)」の重要性を強調した。自己認識、自己管理、内的モチベーションといった「内面へのアプローチ」と、アクティブリスニング(傾聴)やフィードバックの受容による「他者へのアプローチ」を高いレベルで循環させることが、信頼関係構築の土台になるという。

 定型的な権利化実務や調査がAIに代替され、安全地帯から外に出ることを余意なくされる今、知財人材に最後に求められるのは、因果関係が見えない中でも事業の成功を信じて提言できる「覚悟と勇気」、そして周囲を巻き込む「人間力」そのものであるというメッセージが共有され、戦略領域における知財の新たな存在意義を示す本セッションは幕を閉じた。

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■LexisNexis PatentSight+ Summit 2026 レポート Vol.1:株式会社アシックス 堀込岳史氏

■LexisNexis PatentSight+ Summit 2026 レポート Vol.2:ダイキン工業株式会社 安部剛夫氏

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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