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デザインによる都市OSの変換

広義のデザインによる「都市OSの変換」──“キレイな概念”より“色気のある都市”へ

東京急行電鉄株式会社 小林乙哉氏×株式会社ビオトープ佐宗邦威氏対談:後編

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世界の都市づくりで重視される「サーキュラー・エコノミー」とは

小林乙哉氏(東京急行電鉄株式会社 課長補佐、以下敬称略)前編では、今我々が関わっている多摩川流域の新しいライフスタイルづくりのプロジェクト「TAMA X」について話しましたが、「TAMA X」で一貫して考えている「今ある資源をいかに最大限活用していくか」という発想は、世界で起こっている流れに合致しているそうですね。

佐宗邦威氏(株式会社BIOTOPE CEO / Chief Strategic Designer、以下敬称略):そうなんです。先日ベルリンに行って、都市開発に関わる世界各国から来た人々と話したんですが、「TAMA X」について話すと、非常に興味を持ってくれたんですよ。おそらくそれは、今多くの都市開発で共通して見られる「サーキュラー・エコノミー(Circular economy, 循環経済)」、「サーキュラー・ソサエティー(Circular society, 循環社会)」という発想と合致しているからでしょう。

サーキュラー・エコノミーは、EUが主導しヨーロッパで提唱されている資源が循環する経済政策です。アクセンチュアではサーキュラー・エコノミーの市場規模が何百億ドルという試算をだしているほどです。この考え方をベースにドイツやオランダ、フィンランドでは様々な社会・都市モデルが実験されています。*1

アレキサンダー・レミール(Alexandre Lemille)が、「Circular Economy2.0」という概念を提唱し、人間が自然とテクノロジーの間に媒介として存在し、適切なバランスをとる媒介として「安全かつ過剰ではないこと」を大切にし、「社会」に対して良いインパクトを与えるという人間中心を越えた考え方があります。その思想を反映した経済ルールをブロックチェーンなどのテクノジー基盤を活用して促進しつつ、地域の中で回す社会ビジョンが提唱されています。

おもしろいのは、生き物とテクノロジーと人間の関係を捉え直しているところ。テクノロジーというと、今までは人間の価値を最大化させるものという認識がありましたよね。しかし、けっきょく人間は、いろいろな生き物に“生かされている存在”です。そこで、自然とテクノロジーの間をとりもつものとして人間を置き、その結果、人間も生かされるというパラダイムシフトが語られているんです。

具体的には、物やサービスをデザインする側が最初から再利用する方法を考え、それを前提にして設計すること、シェアリング・エコノミーのように遊休資産をできるだけ活用する取り組み、ビジネス合理性だけを重視するのではなく、「全くロスのないビジネスエコシステムを目指す」といったルールを設定してブロックチェーンで運用するなどが挙げられます。

このほうが結果的に長続きするし、自然とも共生できるという考え方は未来的で今着目している考え方です。

*1:https://www.accenture.com/jp-ja/company-news-releases-20151117

小林:おもしろいですね。テクノロジーは進化していますが、それを社会課題の解決や人のライフスタイルの改善につなげていくにはハードルもあるなと感じています。UberやAirbnbを見ても、一つの革新的なシステムを作ったから解決ということではなくて、システムが定着して人のためになるまでには法律や文化、価値観の変化が必要ですよね。そういった変化をサービス提供側だけでなく、行政、地域の人々、サービスを享受する人々を含めた社会全体で目指していく点が非常に新しいですよね。

小林乙哉小林乙哉氏(東京急行電鉄株式会社 課長補佐)
早稲田大学ビジネススクール修了。筑波大学大学院で都市計画を学び、東急電鉄に入社。渋谷ヒカリエを企画から開発、運営まで行う。途中2年間、東京都庁の都市整備局に出向。2014年からは二子玉川ライズが完成した後の街づくりとして、人と情報のコネクションポイント「カタリストBA」、「TOKYO ART FLOW」などのアートイベントやセグウェイツアーなど、新技術や都市の公共空間の活用などの社会実験やイベントなどを手がける。現在は主に、多摩川流域での暮らしと経済の新しい形を考える「TAMA X」を担当。

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