語ることが出来なかったことを、語れるようにするための「問題の外在化」
既存の物語の枠組みを変えていく一歩目として、「問題の外在化」という考え方がある。例えば、うつ病を人の内側にある問題と捉えると、「ストレス耐性をつけましょう」とか「薬を飲んで脳の機能を回復しましょう」といったセルフメンテナンスによる問題解決に向かいがちだ。しかしナラティヴ・アプローチでは、人と問題を切り離すために問題を外部に置いてみる。
宇田川氏は問題の外在化の例として、ナラティヴ・セラピーの創設者であるマイケル・ホワイトとADHDの子どものやり取りを紹介した。ホワイトはその子どもに「君のADHDは何色?」とか「どんな顔をしているの?」「どんなときに来るの?」といったことを聞いたのだという。そうやって問題を人の外側にあるものとして捉えると、その子の内側に問題があるというドミナント・ストーリーの中にいたときとは違う意味が立ち現れてくる。例えば、必ずしも問題に困らされているだけではない自分が見えてきて、今までにない対象法が見えてきたり、他の人が問題に一緒に取り組む余地が見えてくる、など様々だ。