中国のフィンテック企業と金融政策から「日本の金融」を考える
宇田川:先程の話は、フィンテックの話に繋がりますね。たとえばアリババなどは購買行動や日常的な習慣のデータが取れますよね。そのデータを元に個人向けの融資をする際に顧客の評価や信用度評価をやっていくという動きがあります。
長田:今までの銀行の優位性は、顧客の情報を一番持っていた、というところにありました。顧客のところに足繁く通ったり、長い関係性の中で構築したさまざまなデータがあったわけです。けれど今、ビッグデータの時代になり、Amazonなど一般的な商業ビジネス企業、eコマース企業は今まで銀行が取れなかった個人や企業の消費行動の膨大なデータを得られるんです。
そしてAmazonやアリババが銀行業に参入することも理屈上は可能です。現に、米銀の中にはウェルズファーゴ社のようにAmazonと提携して情報を集めている銀行もあります。そうやってありとあらゆる情報を集めながら効率的に融資をしたり預金を獲得したり、保険商品を販売していかなければ、もう銀行は生き残れないんですよ。それをなぜ日本でやらなくてすんでいるかといえば、規制があるから。銀行業は非銀行ビジネスの資本を持つことは許されていないから、銀行は提携を求められないし、商業ビジネス企業は銀行を行えないんです。
宇田川:日本のように銀行業への参入規制が厳しい先進国は他にはないのでしょうか。
長田:リーマンショックを見るとわかるように、金融セクターが“風邪を引く”と大変なことになってしまうので、どの国も参入規制は厳しいです。資本主義の国は、金融システムの安定という観点から、参入規制のさじ加減に悩んでいると思います。
宇田川:中国ではフィンテックが発達し、進化していますよね。
長田:中国では四大商業銀行と呼ばれる大きな銀行4つが完全に国に管理されていて、アリババ等のeコマース系決済サービス企業は2社に絞られています。政府が実質的に管理した上でやっているので、競争はありません。そして、国家側もeコマース系金融機関を推進するのは、個人情報を全部握れるから魅力があるのですよね。それは中国が共産主義国だからできることであって、日本でこの議論を適用しようとしたら大反発が起こるでしょう。