三菱商事・和光貴俊氏に聞く、業績好調でも拭えない危機感──ビジネスモデル大転換時代に不足する経営人材

ヒューマンリンク株式会社 代表取締役社長 兼 三菱商事株式会社 人事部付部長 和光 貴俊氏【前編】

 連載「人事と経営のジレンマ」では、組織論・経営戦略論研究者の埼玉大学大学院宇田川元一准教授と、人材育成・採用・組織開発に関するサービスを提供するリクルートマネジメントソリューションズにて、HR領域における事業開発をリードする荒金泰史氏を連載ホストに迎えます。「事業開発×人事・組織開発」をテーマに、有識者・実践者との鼎談を実施し、経営変革の両輪を担う「事業開発」と「人事・組織開発」それぞれの役割、両部門が共同して行うべきこと、部門を跨いでのみしかなし得ない経営変革に必要な要素とは何かを探索します。
 今回は、三菱商事で人事畑を歩み、現在はヒューマンリンク株式会社の代表として、三菱商事グループの人財開発を担う和光貴俊氏にお話をお聞きしました。前・中・後編でお届けする記事の前編では、ビジネスモデル大転換時代の商社において、今までの人事制度の変遷を振り返り、現代の課題や次代の成長軸への危機感、イノベーションのための人材開発や組織開発に関してお聞きしました。

[公開日]

[語り手] 和光 貴俊 宇田川 元一 荒金 泰史 [取材・構成] 西山 武志 [写] 長谷川 梓 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ワークスタイル 事業開発 企業戦略 ナラティヴ・アプローチ 経営人材

  • ブックマーク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

“ビジネスモデル大転換時代”の商社における人事

宇田川元一氏(埼玉大学大学院 人文社会科学研究科 准教授、以下、敬称略):商社は、ここ15年ほどの間に大々的なビジネスモデルの転換が起きていますよね。その中で、求められる能力や人事制度など、組織内のあらゆる要素を劇的に変革していかなければならない状況にあったのではないかな、と解釈しています。

 人事など組織の根幹に関わることの変革は、長期的に構えなければならない。一方で、短期的には合理性がないために、なかなか取り組めないことが一般的です。そのジレンマをどう乗り越えていくのかが、これからの人事・組織開発における重要な課題だと認識しています。今回は、老舗の大手商社という保守的になりがちな環境下で、激動期に人事を担ってきた和光さんと「組織のジレンマとの向かい方、乗り越え方」について、お話ができたらと思います。

荒金泰史氏(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRアセスメントソリューション 統括部 マネジャー、以下、敬称略):はじめに、和光さんのこれまでの経歴と現在のお仕事について、お伺いできますか。

和光貴俊氏(ヒューマンリンク株式会社 代表取締役社長):私は1987年に三菱商事に入社して、最初に配属されたのが人事でした。ブリティッシュ・ロックが好きで「海外に行くチャンスがありそうだ」というわりと単純な動機で入社を希望していて、配属の希望も営業で出していたから、人事と言われた時は正直、絶句しましたよ(笑)。そんなわけで、私の人事キャリアは図らずもはじまりました。

 商社によって人事部門のキャリアパスはまちまちですが、弊社は比較的、人事分野での経験を長く積んでもらうようなジョブローテーションで、プロフェッショナリティーを持った人間を育成していこうという方針で来ました。私も一時期は企画調査部という部署に異動して社内コンサルのような仕事もしましたが、基本的には一貫して人事の業務に従事しています。

 90年代後半あたりはニューヨークに駐在、その後、中国オフィスの人事制度の刷新に取り組むなど、しばらく海外駐在が続いて、2000年に日本に戻ってきてからは本社で採用と人材開発の統括を担うように。その後は人事戦略を絡めた経営企画に携わり、二度目の米国駐在を経て今に至る……というキャリアをたどってきました。現在は、本社の人事部と兼任でヒューマンリンク株式会社の代表を務め、グループ会社の人材開発や人事制度のコンサルティングも手がけています。

バックナンバー