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「組織における異才」を支援するための箱庭という余白──エンタメ社会学者・中山氏と語る大企業の生きる道

ゲスト:エンタメ社会学者/株式会社 Re entertainment 代表取締役 中山淳雄氏

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 今回のゲストは「エンタメ社会学者」の中山淳雄氏。中山氏はビジネスの実践者かつ研究者であり、エンタメ領域を俯瞰的に語った著書も多数ある。藤井氏との議論は、エンタメ界の巨匠の多くがサラリーマンであったことから始まる。30年ほど前のエンタメ業界やソーシャルゲーム絶頂期のゲーム業界などに起こった「転換期にある異才人材の流入」などを俯瞰する。そのうえで、大企業が生きる道としての「個の人格の表出」や「組織クリエイター支援」などを語った。

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かつてのエンタメ界の巨匠は、意外なほどにサラリーマンばかり

藤井保文氏(以下、藤井):中山さんは「エンタメ社会学者」を名乗っています。この肩書きにはどんな想いを込めたのでしょうか。

中山淳雄氏(以下、中山):「学者」と名乗ってはいますが、私の95%はビジネスマンです。なので、講義で話したり本に書いたりしていることも、最初は自分がビジネスプロジェクトを進めるための業界研究の位置づけでした。ビジネスや社会全体の中で、エンタメを体系的に整理したうえで、どう位置づけるかを重視しています。

藤井:最初はご自身のビジネスに役立てるためだったということですか?

中山:はい、それをやっていたらいつのまにか、結果としてビジネスとエンタメ双方から重なる位置にいた、という感じです。けれどもそういう中途半端な立ち位置ゆえに、自分にしっくりとくる肩書きが存在しなかった。コンサル、ベンチャー企業役員、研究者、あるいは経産省の仕事もしていたので、私にはたくさんの顔がありました。毎回説明するたびに皆さん「???」となってしまうので、ちょうどいい肩書きを作る必要がありました。

 その際、私はずっと上野千鶴子先生に師事してきましたし、現場へ行って話を聞き、新しい価値を社会に実装することを重視してきたので、「社会学者」という肩書きは非常に使い勝手がよかった。他の学部じゃダメですけど、社会学だけ博士号ももたずに学者名乗っていいというのがなんか慣習的にもあるし、だったら「エンタメ社会学者」でいいのかなと。

藤井:著書の『推しエコノミー[1]』はわかりやすく「ビジネスのインサイト」にフォーカスされた印象ですが、一方で『エンタの巨匠[2]』も非常に興味深く読ませていただきました。「まえがき」にもあるように、かつて強かった日本のエンタメ業界が中国・韓国のプレーヤーに後塵を拝するのがいまだとすると、かつて一時代を築いた天才クリエイターの所業を明らかにし、日本の戦い方を提示するのが『エンタの巨匠』の狙い、というところでしょうか。

中山:いや、実を言うと、『エンタの巨匠』は最初から強い構想があったわけではないんです。自分が面白そうと思う人にインタビューして、それを本にできたらいいな、くらいの発想で。元・少年ジャンプの編集長である鳥嶋和彦さんにしても、「ストリートファイターⅡ」などのゲームクリエイターである岡本吉起さんにしても、ここまでちゃんとまとまって語ってもらった本は初めてで、それだけでも価値があると。

 6人それぞれにお話をお聞きして、最後に共通点をまとめたというのが正直なところです。ただ、これは振り返ってみて気づいたことですが、お話をお聞きした方々は皆、「サラリーマンでありながら頂点を極めた人」という点が特徴でした。


[1]中山淳雄『推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP社、2021/10/14)

[2]中山淳雄『エンタの巨匠 世界に先駆けた伝説のプロデューサーたち 単行本』(日経BP社、2023/1/26)

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この記事の著者

鈴木 陸夫(スズキ アツオ)

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