2026年6月29日、マッキンゼー・アンド・カンパニーは「気候変動適応の推進」と題するホワイトペーパーを発表した。今回の報告書は、企業活動や社会インフラへの影響が深刻化する中、温室効果ガス排出削減を目的とした「脱炭素」対策だけでなく、気候変動の回避できない影響に備えるための「適応」への対応とその投資規模について分析したものである。
ホワイトペーパーでは、冷房設備、水資源管理、灌漑、防災インフラ、沿岸防護施設など20の適応策を取り上げ、世界の備え状況と今後必要な投資額を明らかにしている。現在、気候変動への適応に対する世界全体の投資額は年間約1,900億ドルにとどまる。しかし、リスクにさらされる人々を先進国水準で保護するには 年間約5,400億ドルの投資が必要と推計された。
現状で十分な保護が及んでいるのは約12億人であり、依然として約30億人が気候変動リスクに対応できていないという「レジリエンス・ギャップ」が存在している。さらに、2050年前後には世界の平均気温が産業革命前比で約2℃上昇するシナリオにおいて、熱ストレスにさらされる人口は約22億人増加、干ばつリスク人口も約11億人増加する見込みである。特に熱波対策や水不足対応のための冷房・灌漑への投資が適応投資の多くを占めるとされる。
必要な適応投資額は将来的に年間1兆2,000億ドル規模に拡大すると分析。これは現在の投資額の約6倍となる。報告書は、適応投資は単なるコスト増ではなく、インフラ被害の抑制や農業・労働生産性の維持、事業停止リスクの回避などを通じて得られる便益がコストの約7倍に達する可能性を示している。「適応」は経済合理性が高い投資であり、企業経営や社会インフラ整備の中核テーマとなる。
日本でも近年、猛暑や豪雨による災害が相次ぎ、気候変動リスクは生産拠点や物流網、サプライチェーン、インフラを直撃している。適応戦略は環境部門にとどまらず、経営戦略や投資判断全体に影響を与える重要な論点となっている。今後、脱炭素策に加え「変化への備え」を強化することが、企業や地域の競争力にも直結すると考えられる。
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