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経営変革の「思想」と「実装」

瀬戸体制下でのLIXILの企業変革──宇田川准教授が解き明かす、現場に自発性が生まれる組織の秘訣とは

ゲスト:株式会社LIXIL 安井卓氏、芦村学氏/クアルトリクス合同会社 増田泰彦氏【前編】

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新築からリフォームへの転換という市場の要請とマーケティング組織の変革

宇田川元一氏(以下、敬称略):今日はLIXILさんのCX改善の取り組みについて、クアルトリクスさんと私を含む3名の研究者とで共同研究をさせてもらった内容に関して、Biz/Zineを通じて発信したいと思い、集まっていただきました。

 LIXILさんではトップがちゃんと全体戦略を考え、現場でもそれを受け止めて地道な取り組みを行っていて、そのことで変革が進んでいるということが見えてきたんです。CXや新規事業、人的資本経営などの変革活動では、トップが考えるということをせずに現場に丸投げしているケースが散見されます。

 LIXILさんではそうならず、現場でも変化に対して前向きな動きができているのは何故なのか。そのことについて詳しくお話いただきたく、当事者である安井さんと芦村さん、一緒にその変革に伴走された増田さんにお越しいただきました。

安井卓氏(以下、敬称略):私はLIXILでマーケティング部門全体をリードする立場にあります。当社でのマーケティングは、宣伝やマーケティング・リサーチだけでなく、ショールームやコールセンター、Eコマース、カタログ、ウェブサイトなどが対象として含まれますし、リフォームの加盟店ビジネスをやっているところなども対象です。

 我々のビジネスの商流は今も昔も「BtoBtoBtoC」です。メーカーと施主の間には流通業者やビルダー・工務店などの多くのプレイヤーが存在し、実際に商品を利用するエンドユーザーとの接点は多くありませんでした。また、ここ数年の大きな市場環境の変化としては、新築着工件数の半減があります。具体的には、1990年に167万戸だった新築着工件数は2020年には80万戸と半減し、新築だけでは売上が半分になってしまうという変化が起こりました。そのため、リフォームやリノベーションを強化する必要が出てきました。

 新築の場合はビルダーの「標準仕様」に入れてもらうことが売上を左右していたのが、リフォームではエンドユーザーにメーカーや商品の決定権が移ってきます。よって、今まで以上に我々はエンドユーザーにアプローチしていく必要があります。そのような構造的な変化に対応すべく、さまざまな部門に分散されていた顧客体験を提供する機能・部署をマーケティング部門に集約して、全般を手掛けるようになったんです。

安井卓
株式会社LIXIL 常務役員 Marketing部門 リーダー 安井卓氏

瀬戸体制下での全社戦略の構築によりCS部門の位置づけに変化が

宇田川:安井さんはマーケティング部門の常務役員として参画されたのですか。

安井:いえ、私がLIXILに入ったのは2017年で、当初はデジタルマーケティングを中心としたシステムの責任者でした。マーケティング部門全体を見るようになったのは2021年からです。瀬戸(欣哉氏※現在の代表取締役会長 兼 社長 兼 CEO)が社長になったのが2016年で、そのときに瀬戸と当時のマーケティング部門のトップだった金澤(祐悟氏※現在の執行役専務 Marketing・Digital 担当 兼 Chief Digital Officer)が、コンシューマーにフォーカスするという方針を立て、変わっていきました。

芦村学氏(以下、敬称略):私は2009年に入社しまして、現在はマーケティング部門のカスタマーサービス統括部に属しており、コンシューマーとの直接のタッチポイントが集まる部署で活動しています。具体的にはコールセンター、修理の受付、LIXILオーナーズクラブという会員制度の運営をする部門、オンラインショップの部門などがあり、私はこれらの部門の活動を横串で支援するCX改善推進グループというところにいます。

芦村学
株式会社LIXIL マーケティング部門 カスタマーサービス統括部 サービス改革推進部 CX改善推進グループ グループリーダー 芦村学氏

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ものづくり企業で顧客起点を浸透させる難しさ

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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