会社提案への風当たりと「役員解任議案」の急増
続いて登壇した中島大氏は、直近の3月総会の振り返りと6月総会の展望から、アクティビストの要求がさらに「高度化・先鋭化」している現状を詳述した。
まず、会社側の提案(特に取締役選任議案)に対する株主の反対比率は年々上昇傾向にある。従来の「独立性基準(社外取締役の独立性)」を満たしているかという視点に加え、最近では「ROE(自己資本利益率)の低迷」や「赤字継続」といった業績基準に基づいて、機関投資家が経営トップの再任に容赦なく反対票を投じるケースが増加しているためだ。
そして、今回の6月総会における最大の特徴として中島氏が挙げたのが、「役員解任議案」の急増である。
「これまでは『自分たちが推薦する社外取締役を送り込む(役員指名)』という形が主流でしたが、今年は『この役員を解任せよ』という議案が16件(2025年は7件)と大きく増加しています」と中島氏は解説する。AVIやオアシスなどの主要ファンドが、事業低迷の責任がある代表取締役や長期在任する創業家会長に対して直接的な解任要求を突きつけている。
「解任議案の提出は、株主側が『この人が経営トップの座にいる限り、この会社は絶対に変わらない』と三行半を突きつけている状態です」と中島氏は語り、米国や欧州では役員の総入れ替えを要求する「ボードリフレッシュメント」のように、日本市場においても欧米基準の過激なガバナンス闘争が本格化している。
事業の本丸を攻める「戦略検討委員会」の設置要求
もう一つの重要トレンドが、「経営戦略」そのものを縛るための委員会設置要求の増加である。
具体的には、経営陣の独断専行を防ぎ、客観的な視点で事業ポートフォリオの見直しを検証させるための「戦略検討委員会(Strategic Review Committee)」や、価格適正化・非公開化の是非を専門に議論する特別委員会の新設を求める定款変更の提案が相次いでいる。直近ではダルトンやストラテジックキャピタルといったファンドが、食品、医薬品、製鉄など幅広い業界の企業に対してこの要求を行っている。
「これまでは潤沢な現預金や政策保有株式を吐き出させる『株主還元(自己株式取得や配当)』の要求が中心でした。しかし企業側の配当増額などが進んだ結果、アクティビスト側の関心は一歩進み、不採算事業からの撤退やグループ再編(親子上場の解消)、さらには非公開化の検証といった、事業そのものの『攻めの意思決定』へとシフトしています」と中島氏はその本質を分析する。
さらに、日本の株主提案の動きを大きく変える要因として、コーポレートガバナンス・コードなどにより要請されている対応事項をそのまま株主提案に転用した「株主提案のテンプレート(雛形)化」が進んでいる点が挙げられる。
ミドルマネージャー層も無縁ではない「資本市場の規律」
本セミナーが示したのは、アクティビスト対応とはもはや「一部の経営陣や関連部署だけの問題」ではないという事実である。
事業ポートフォリオの見直しやROIC(投下資本利益率)目標の開示要求といったトレンドは、各事業部門を率いるミドルマネージャー層が推進する「新規事業の投資判断」や「既存不採算事業の撤退基準」に直結する。自社が上場企業として生き残るか、あるいは非公開化して新たなベストオーナーのもとで戦うかという経営判断は、現場の事業推進のスピードや組織構造そのものを激変させる。
上場企業の全社員が「資本の効率性」と「市場からの目線」を自分ごととして捉え、自律的な企業価値向上へ向けてアクションを起こせるか。上場企業数が半減する未来を生き抜くための「攻めのガバナンス」への転換が、今まさに求められている。
