成功パターンは多様。社内で事業を育てる3つのアプローチ
内部で「育てる」事業は、まったく異なるアプローチで成長を遂げた。
1つ目は、AIマーケティングソリューションの「BestMove」だ。熱量の高いリーダーに資源を集中し、最速でピボットを繰り返し立ち上げた。
2つ目は、素材化学産業向けのAIトランスフォーメーション事業である。研究者の専門性を活かし、まずはコンサルティングで収益化して事業化へつなげた。
3つ目は、「企画書AI診断サービス」だ。これは、事業開発をAIトランスフォーメーションするもので、最初は自分たちで使うサービスとして立ち上げている。
「『企画書AI診断サービス』は、自らの業務課題の解決から爆速で開発を進めたところ、非常に良いものができたため、結果として外販へと至りました」
これら多様な出口設計により、事業のゾンビ化と人材の飼い殺しが起きていた組織から、2年余りで3つのサービスが世に出た。
さらに松田氏は、これらの成果を社内外へ「魅せる」活動にも注力した。専門チームを設立して発信力を強化し、経団連のスタートアップフレンドリースコアリングで5位へ上昇し、2025年には「NEC Open Innovation」としてグッドデザイン賞も受賞した。現場のモチベーションも高まり、組織のエンゲージメントスコアも大きく回復したのである。
AI時代の超高速開発と次の事業の柱にまでスケールさせるための「面」戦略
徹底した選別と集中により組織の再建を果たした松田氏が見据えるのは、これからのAIネイティブな事業開発だ。
ここ数年のAIの急激な進化を見ていると、順を追って試しながら少しずつ資金を投入していく従来の「リーンスタートアップは既に終わった」と松田氏は断言する。
これからは明確な目的からバックキャストし、AIコーディングなどを用いて1日でMVPを作成し、超高速でPDCAを回す時代となる。そうなると、事業が“ゾンビ化”する隙すらなくなる。
さらに、単発の事業が乱立する状態ではなく、顧客の業務プロセス全体をカバーする「面」での価値提供が必要不可欠になる。サービスをAIエージェントによって連携させ、1つの業務の中でシームレスに流れるような大きな価値へと発展させる。これにより、次の事業の柱になる規模の大きな事業の創出を狙うと松田氏は話した。
「日本企業や日本のスタートアップがグローバルへ進出していく時代を作らない限り、日本の競争力は向上しないと考えています。それを実現するためには、物理空間やリアルな現場が持つ価値を、いかにビジネスへと変換していくかが鍵となります。これはNEC単独の力では成し遂げられません。皆様とともに、新規事業を通じて日本の新しい時代を創り上げていきたいと考えています」
松田氏は会場に向けてこのように呼びかけ、講演を終えた。

