サンクコストを捨て新体制で断行した「61件の中止」とピボット
67件の停滞プロジェクトをどう扱うか。松田氏は判断軸として3つのポイントを重視した。1つ目は担当人材の「熱量とスキル」、2つ目はNECの強みを活かして事業が「スケールするか」、3つ目は将来ビジョンや中期計画などの「方針」と合致するかである。
初期段階では積極的に社外へ出向き、顧客の反応を聞く活動を重ねた。その結果、67件中61件を中止し、3件を外部へ出し、3件を内部で育てるという厳しい選別を行った。
「プロジェクトの中止は非常に難しい決断です。担当者の強い情や熱意、共創で他者を巻き込んでいる手前やめられないというプレッシャー、過去のサンクコストを捨てられない心理に加え、『中止=失敗』というネガティブなイメージが判断を鈍らせる要因になります」
プロジェクトの選別という難題に対し、松田氏は自身に“情”が湧いていない新体制発足のタイミングを活かし、合理的な納得感をもとに事業のリセットを断行した。さらに「やめやすい組織」の要として、特定のテーマに固執せず、方向転換(ピボット)が必要な際に即座に次の挑戦へ移れる柔軟な人材を採用・育成し、リソースの再配分が可能な仕組みを整えたのである。

技術を社外で開花させる「カーブアウト」と「NEC X」
外部へ「出す」判断を下した事業には複数の手段が用いられた。代表例が「カーブアウト(事業の切り出し)」だ。確かな技術と覚悟を持つ人材がいる場合、外部で資金と機動力を得て社会実装を加速させる。この方針のもと、因果分析AIの「hootfolio」や仮想空間広告の「ignithus」といったスタートアップが切り出された。
「NECは技術の会社であるため多くの優れた技術を持っていますが、それをビジネスとして実行する力が弱いという課題がありました。このギャップを埋めるため、保有技術と外部の起業家をマッチングしてスタートアップを立ち上げてもらう取り組みを推進しています」
松田氏がこのように語る、自社の技術を外部の力を使って事業化する取り組みが「NEC X」だ。約7年前からシリコンバレーで培ってきた技術と起業家をつなぐ仕組みを、昨年から「NEC X - JAPAN Edition -」として国内にも導入した。日本でも起業家文化が育ちつつある中、NECの事業基盤やアカウント力を活用することで、技術を外の世界で大きく育てる新たなオープンイノベーションのエコシステムが力強く回り始めている。
