異端の事務局が火をつける。新規事業に必要な「旗振り役」
──私自身も企業内で新規事業のビジネスコンテストやCVCの立ち上げを行ってきた人間として、今回はヤマハ様の取り組みをしっかりと深掘りさせていただきます。まずは山本さん、自己紹介をお願いいたします。
山本雄登氏(以下、山本):ヤマハで新規事業開発部に所属しております、山本と申します。現在、ビジネスコンテストの企画運営を担当して5、6年になります。元々は情報システム部でWeb関連の開発保守運用を担当していたのですが、そこで感じたIT業界の課題をなんとか改善したいという思いから社内ビジネスコンテストに応募し、最終審査を通過したことがきっかけで、現在の事務局に携わっています。また、研究開発にも所属し、声でバスドラムを操る「VXD」の実証実験なども担当しております。
──初めてお会いしたときから「見た目からしてイノベーティブすぎませんか」というのが第一印象でした。社内には、山本さんのような茶髪や金髪の方が多いんですか?
山本:多いですね。私がビジネスコンテストの担当を引き継いだ際、前任者たちもイノベーティブな髪型だったりファッションだったりしたので、これはさすがに黒髪ではできないぞと思い、金髪にしました。派手なセットアップを着るなど意識しているのですが、やってみるといろいろな人に顔を覚えてもらえるというメリットがあります。私自身はキャラクター的に新規事業に向いているとは思っていないのですが、あえて見た目を合わせにいっているという感じです。
──大企業の中でビジネスコンテストや新規事業の制度を運営するにあたり、「旗を振っている方が誰か」は非常に重要です。現場の応募する方からすると、どなたが運営しているかは大事な要素ですよね。
山本:応募する方の心に火がつくタイミングがあるのですが、その火は2日くらいで消えてしまいます。ですので、火がついた瞬間にアプローチして会話することがとても大事です。大体そういう方は私を見つけてアプローチしてくれるので、見つけやすいというのはビジネスコンテストの担当者として理にかなっていると思っています。
ヤマハのビジネスを“転調”させる「TRANSPOSE」
──実際にヤマハ様がどのような制度をやられているのか、ご説明をお願いします。
山本:2015年から実施している社内のビジネスコンテストを昨年大きくリニューアルし、現在は「TRANSPOSE Innovation Challenge」という名前で実施しています。ヤマハ社内からだけでなく社外、そして国内だけでなくグローバルでアイデアを受け付け、オープンイノベーションを軸に事業創出を目指す運びとなりました。「TRANSPOSE」には音楽用語で「転調」や「移調」の意味があり、ヤマハが主軸にしている音楽やエンターテインメントのステージを1段上に“転調”させたいという思いがあります。また、Excelの「トランスポーズ関数」にある「組み替える」という意味から、ヤマハの風土を新しいものに入れ替えていこうという思いも込めています。
──最終選考を赤レンガ倉庫で、しかも音楽をかけながらやられたと耳にしたことがあります。
山本:昨年初めてグローバルで応募をかけ、63ヵ国から314件のアイデアが集まりました。そこで最終選考も気合いを入れようと、横浜の赤レンガ倉庫を借りて実施しました。「感性をビジネスにしている会社」として、ピッチコンテストでも皆様に感性を伝えられないかと考え、プロのジャズバンドをお招きしました。
スタートアップのCEOに最初の1分間で達成したいビジョンを語っていただき、それに合わせてジャズバンドが即興で演奏します。ビジネスのロジックだけでなく、創業者の情熱を皆様に体感していただきたいという思いで実施し、非常に好評なプレゼンテーション形式となりました。
──なかなかないですよね。最終プレゼンを赤レンガ倉庫でおこない、ジャズの即興演奏がつく。ヤマハという元々のカルチャーに合わせてローカライズが効いている点が非常に素晴らしいです。社内の人間があの場所を目指したいと思える要素が詰まっていますね。
山本:ファイナルピッチには一人だけ社内のメンバーも登壇し、見事に賞を受賞しました。彼が社内でヒーロー化することで、来年の若者が「応募しよう」と思えるようになります。このサイクルが生まれたことが重要だと思っています。



