「個社完結」の限界。新たなリーダーに求められる「共創」の力
梶川:次世代リーダーを育成するOJTの場として新規事業が機能しているとのことですが、そこで育成される次世代の「CEO」には、既存事業のリーダーとは違う能力が求められているのでしょうか。具体的な事業事例とあわせて教えていただけますか。
木村:これまでの製造業は、開発から製造、販売、アフターサービスまで自社でバリューチェーンを完結させて成功してきました。しかし、今の時代に自社単独で新たな事業を立ち上げて顧客への価値提供を実現するには多くの時間とリソースを必要とします。
弊社の場合、たとえばモビリティサービス事業では、アフリカやインドといったBOP層向けにバイクのオペレーティングリースを展開していますが、弊社に配車プラットフォームを運営する専門性はないため、現地のスタートアップと提携しています。バイクというアセット自体は私たちが持ち、現地のライダー管理や日々のリース代の回収はスタートアップに委託するという補完関係を築くことで、リース事業としてのバリューチェーンを実現しています。
梶川:自社だけでは完結しないビジネスモデルだからこそ、社外を巻き込む力が不可欠になるわけですね。他の事業領域でも、同様に外部の知見を掛け合わせるアプローチをとられているのでしょうか。
木村:はい。自社のサーフェスマウンター技術を応用し、細胞を精緻に移動させるロボティクス技術を製薬業界向けに展開するメディカルデバイス事業や、無人ヘリコプターで森林や未発掘の遺跡を観測する航空計測事業なども、外部の専門家との協業が不可欠です。また、オーストラリアおよびニュージーランドのスタートアップを買収して進めている農業自動化や、ティアフォー社との合弁で展開する工場敷地内での自動運転搬送事業「eve autonomy」なども並行して進めています。
梶川:どれも自社の技術と外部の知見を掛け合わせ、他社と連携しながら最終的なカスタマーバリューを作り込んでいるのですね。
木村:ええ。だからこそ、過去の既存事業を成功に導いてきたコンピテンシーと、今の新規事業を牽引するリーダーに求められるコンピテンシーは大きく変わってきていると考えています。外部と関係性を構築し、協業を通じて価値を生み出せる人材をどう育てるか。それが「Perspectives Journey」へとつながっていきます。
本気のリーダーが集結。共同プログラムの全貌と目指すゴール
梶川:そうした次世代リーダーを育成する「Perspectives Journey」の具体的なプログラム概要について教えてください。
池田:本プログラムは2026年4月21日から10月2日までの期間で、第2期がスタートしています。会場はヤマハ発動機さんのみなとみらいオフィスをお借りし、大企業にて新規事業を推進するリーダー約16名(10社)が参加します。参加企業には日本を代表する企業が名を連ねています。
梶川:どのような目的やゴールを設定して設計されたのでしょうか。
池田:大きな目的は、大企業の新規事業を推進していくリーダーが相互に刺激しあい、日本の大企業の新規事業創造をさらにアップデートさせていくことです。またゴールとして、今まで知らなかった世界や価値観を認識し、他者の視点で新規事業を考えられるようになること、そして大企業で新規事業創造を推進するリーダーとしての志や「(すべてを引き受けて生きるという)アンガジュマン的志向性」を芽生えさせることを掲げています。
木村:参加していただく方は、「デザイン思考も聞いたことがない」というような初学者ではなく、既に自社の新規事業を背負い、自分の言葉でお話しできるレベルの方にお声がけしています。互いの経験を共有し合い、新規事業を進めていく上での質の高い判断軸を得るには、参加者同士のレベル感と相互の学び合いの質が極めて重要だからです。広報活動を大々的に行わず、あえて声かけベースで本気の方を集めているのもそのためです。



