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注目の経営書の著者と語る

なぜAI時代の新規事業は「一度使われて終わる」のか──ビービットに学ぶ、持続可能な「地形」のUX戦略

ゲスト:ビービット 取締役 COO 藤井保文氏、執行役員 平井剛直氏、廣橋沙紀氏

大久保 遥(Biz/Zine編集部) [著] / 黑田 菜月 [写]

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実践でつまずく2つの壁──遅すぎる「ユーザー調査」と壊せない「プロトタイプ」

大久保:企業が実現したい良質な体験を促すための「地形」を実際のプロジェクトに落とし込む際、書籍で解説されている「見えない仕組みをつくる10のステップ」の中で、特に大企業の新規事業担当者がつまずきやすいポイントはどこでしょうか。

事前準備―実現したい「世界観」を理解する

フェーズⅠ 今ある行動フローを把握する

  1. メインユーザの行動フローを把握
  2. 周辺プレイヤーを洗い出し、行動フローを把握
フェーズⅡ ペインをゲインにする「からくり」を設定する
  1. メインユーザのペインを把握
  2. メインユーザのゲイン状態を仮定
  3. ペインがゲイン化する「からくり」の発見
  4. 仕組みの価値を言い切る
フェーズⅢ 仕組み全体の流れを描く
  1. 各プレイヤーの体験が重なる仕組みを描く
  2. 仕組み全体の流れを統合的に見渡す

フェーズⅣ 実践し、磨いていく

  1. 核となる体験を粗く具現化し、小さく試す
  2. つくられていく将来像を描写する
「10ステップの全体像」(フェーズI〜IV)
出所:『選ばれるUX──「日常に溶け込む」体験のつくり方』(英治出版) クリックすると拡大します

平井:10のステップは、「事前準備」の後、大きく「I 行動フローの把握」「II からくりの設定」「III 仕組み全体の描画」「IV 実践し、磨く」という4つのフェーズにわかれています。大企業の方が特につまずきやすいのは、最初のフェーズIでユーザーやステークホルダーの行動フローを把握するために行う「生データ(一次情報)へのアクセス」と、フェーズIVで行う「小さく試すこと(プロトタイピング)」です。

 私たちは、プロジェクトが始まって最初の3日のうちに、ユーザーインタビューや行動観察などを通じて、何かしらの一次情報に触れるようにしています。真空状態からコンセプトを立てることはできず、誰が何に困っているかという「一次情報」がなければ、行動フローの把握も、仮説設定もできないからです。

大久保:開始からわずか3日目、ですか。机上で企画書を練るよりも、まず足を使って現場に触れるのですね。

平井:特に大企業の場合、社内ヒアリングはたくさんする一方、生活者の生の声を聞くユーザーインタビューとなると腰が重い傾向があります。その結果、企画書をつくり込んで後に引けなくなってから、「失敗していないことを確かめるための調査」を半年後にやってしまうケースが本当に多いのです。

大久保:フェーズIVの「小さく試す」でも壁があるのですね。

平井:最初のプロトタイプは100点をとれなくて当たり前ですから、「さっさとぶつけて、さっさと壊そう」というスタンスで小さく試し、検証の回転数を上げることが求められます。

「意見」ではなく「行動」を追え──英会話スクールに学ぶ「空想のUX」を脱する方法

大久保:書籍で紹介されていた英会話教室の事例でも、現場の行動観察から思わぬ実態が浮き彫りになっていましたね。

廣橋:その英会話教室では「毎年1万人入会するのに、1年で約半数が辞めてしまう。家で宿題をやってくれない」という課題からのスタートでした。生徒の方にストレートに理由を聞いても「忙しい」といった表面的な意見しか返ってきません。そこで実際の1週間の生活行動を細かく追ったところ、生徒が宿題をやりたくなるコアは「講師からの反応」だとわかりました。宿題をやっていかなくても授業は成立してしまい、講師からの反応もないため、宿題が「やらなくても成立する行動」になっていた実態が見えたのです。

大久保:ユーザーの行動を調査したからこそ、講師のフィードバック不足という根本原因にたどり着いたと。支援先の企業が最初から仮説を持っていることも多いと思いますが、その仮説がひっくり返ることも多いのでしょうか。

廣橋:そうですね。この事例でも、「通知が届いたら嬉しくなり、やる気が出て学習が進むはずだ」といった仮説がありました。ただ、問題なのは、自社にとって都合の良いユーザー体験(ゲイン状態)を空想で描いていることです。これが先行していると、その理想状態をどう実現するかという、行動を変える具体的なからくりが抜け落ちてしまいます。

平井:たいていの場合、「こうなったらいいな」というビジネス的な願望が作文されていることが多いですね。書いてみるのは良いことですが、それが生活の中に馴染むかは別の話で、試行錯誤が必要です。

藤井:日本のメーカーは品質を重視するあまり、実験一つに数年かける傾向があります。人の命に関わる乗り物などでは当然必要ですが、Airbnbが自分の家にエアマットレスを置いて小さく始めたように、多くの企業では小さい範囲で試せる実験環境を持つことが重要です。

廣橋:モノづくりの途中から入ったライオンの「子どもの歯みがき支援」のプロジェクトでも、実機ができる少し前の段階からUX起点のフィードバックを返し、生活に馴染む形へとリカバリーすることができました。

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「多産多死」の組織がAI時代の事業を制する

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この記事の著者

大久保 遥(Biz/Zine編集部)(オオクボ ハルカ)

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