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IBMのデザイン思考の伝道師、フィル・ギルバート氏は日本で何を語るか

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IBM Designのフィル・ギルバート氏が4月の下旬に「UX戦略フォーラム」のために来日する。講演の内容は後日Biz/Zineでもレポートする予定だ。今回は来日に際して、ギルバート氏の紹介とバックグラウンドについて、ソシオメディアの篠原氏が解説する。(本記事はソシオメディアのブログの転載となります)

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IBMのデザイン思考による変革:よいデザインだけではもはや充分ではない

 2017年4月下旬に、エクスペリエンスデザインの世界的リーダーで、IBM Design ゼネラル・マネジャーのフィル・ギルバート氏(Phil Gilbert)が来日し、イベント「ソシオメディアUX戦略フォーラム 2017 Spring」に登壇する。同氏が行うキーノートのタイトルは、「よいデザインだけではもはや充分ではない:差別化のためのデザインを目指して(Good design isn’t good enough anymore: designing for differentiation)」。

 このタイトルが、かつてIBMを絶対的な地位へと導いた名経営者トーマス・J・ワトソン・ジュニアによる名言「よいデザインがよいビジネスである(Good design is Good Business – 優れたデザインがあってこそより強固な企業ブランドが築かれることの意))を意識してのものであることは容易に想像ができる。現在、同社はデザインに対する考え方においても、ダイナミックに変革を遂げようとしているのだ。

 ギルバート氏の人となりについては、New York Times 誌の記事「IBM’s Design-Centered Strategy to Set Free the Squares(「IBMのデザイン中心戦略が『時代遅れ」を取り除く』、2015年11月』』に詳しい。記事によれば同氏は「頭を剃り上げ、ワイヤー縁のメガネをかけた背の高い男性だ。いつもカウボーイ・ブーツと青のジーンズで出社する。見かけはカジュアルの彼だが、実はIBMの重役だ。彼のオフィスには若きボブ・ディランが「Highway 61 Revisited」の楽譜を書き換えている白黒写真が飾られている」そうだ。そして、それは「反抗精神と勤勉の両方を象徴している」とも自らが語っている。

 ギルバート氏は、1978年にオクラホマ大学のトップ10として卒業した後に、エンジニアとしてのキャリアを重ねた後、ソフトウェア企業Lombardi Software 社を起業する。同社において、ソフトウェアを迅速に開発してより良くしていくための手段として、IDEO 社のデビット・ケリー(David Kelly)氏によるデザイン原則に出会い、それを学んで取り入れるようになる。
 その後、2010年にIBMによる Lombardi Software 社の買収にともなってIBMに参画、2012年にジニー・ロメッティ(Ginni Rommety)氏がCEOに就任。彼女のリーダーシップの下でIBMの顧客のエクスペリエンスにおける「再思考、そして再想像する(to rethink and reimagine)」という動きが繰り広げ始められるようになって、同CEOとギルバート氏とのパートナーシップ関係が始まることになる。
 こうした企業経営者とUXリーダーとの良好なパートナーシップの有り様は、デザイン主導で成功した代表的な組織であるAppleの故スティーブ・ジョブス氏とジョナサン・アイブ氏との関係にも匹敵すると言われている(参考:「UXリーダーシップの未来は急進的な変革にあり – 組織においてUXをどのように位置付けて成功に導くか」、UXmatters、2014.10)。

 ギルバート氏が進める「IBMデザインプログラム」とは、大きく2つの原則に基づいている。1つは、正式なトレーニングを受けたデザイナーをこれまでに前例のない規模でIBMに迎え入れることである。2016年中頃までに1,000人以上のデザイナーが新しく加わっている。もう1つは、同社の社員を「デザイン思考」や「アジャイル」のスキルを持ったグローバル人材に再教育することにある。2017年末までに10万人以上の「Design Thinker(デザイン思考の実践者)」を養成する見通しとなっている。同社の従業員は37万人強、その同社の約4分の1を超える規模にのぼる教育活動となっている。

 米 Harvard Business Review 誌(Sep 2015 表紙)
米 Harvard Business Review 誌(Sep 2015 表紙)

 そもそも、IBMによって「デザインの重要性」が唱えられたのは1950年代に遡る。当時のIBMが提唱するデザインとは「目に美しく、機能的な製品」という意図だった。しかし、現在同社が提唱する「デザイン」には、もっと広範な目的を持つ意味が込められている。仕事をより迅速に進めること、より生産的に進める方策を探ること、そして、「ユーザーのニーズ」から課題をみつけ、そのニーズを探求して、素早くプロトタイプを創り出すこと、などが意図されている。これがまさに「Design Thinker」に求められるスキルセットなのである。

 こういった傾向は、米国企業の間では既に大きなうねりとなっていて、デザインはもはや製品開発やサービス開発だけでなく、あらゆる戦略や意志決定を導くビジネスリーダーにとっての基礎素養であるとされている。デザインのエキスパートは、ベンチャー企業や新規事業分野のみならず、あらゆる企業や業界、さらにはベンチャーキャピタル企業でさえ採用される勢いだ。こうした兆候は、2015年9月の米 Harvard Business Review 誌の “The Evolution of Design Thinking.” (日本語:「デザイン思考の進化」、ハーバードビジネスレビュー日本版、2016年4月号)の特集が出されたことに象徴的に見られた。

 また昨年5月に来日した米GEのCXO(2016年当時)のグレッグ・ペトロフ氏の講演が与えた衝撃も記憶に新しい(参考:「世界を牽引するUXリーダーの実像」、2016年12月)。

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この記事の著者

篠原 稔和(シノハラ トシカズ)

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