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マインドフルネス研究第一人者のジェレミー・ハンター氏が語る、本当の生産性改革とは?

特別鼎談:ジェレミー・ハンター氏×入山章栄氏×佐宗邦威氏 前編

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工業化社会から、「心」を尊ぶ知的生産の時代へ

佐宗(biotope 代表取締役社長):
 前回は、曹洞宗の僧侶として禅を指導する藤田一照さんと鼎談を行い、「マインドフルネス」について大変興味深いお話をうかがいました。ハンターさんもまた、クレアモント大学院で企業経営者を対象にマインドフルネスの実践を教えておられます。そこでまず、経営者・ビジネスパーソンにどのようにマインドフルネスを伝えていらっしゃるのか、お聞かせいただけますか。

ハンター(ドラッカースクール准教授):
 その前にお伝えしておきたいのが、マインドフルネスは私の授業の一部分であるということです。それだけで全体を成すものではありません。基本的に私の興味は、「人々がものごとを考え、創造し、可能性を広げ実行する能力を増強させる」ことにあります。

 ピーター・ドラッカーの教えとアジア的なものの間に、何か共通する部分があるとすれば、それは“脱工業化社会”において非常に重要なものだと思われます。ドラッカーは「ナレッジワーカーの生産性」を取り上げました。それは工業労働者の生産性とは全く異なっています。

 私は大学を出てすぐに工場で働いた時期があります。決まった時間に工場に出勤し、決まった時間に帰宅し、決められた仕事の手順を繰り返し、1日の終わりに部品を何個作ったか数えるんです。非常にわかりやすい世界でした。職場の人間関係もそう複雑なものではありませんでした。一方、現在に目を向けると知識社会化が急速に進んでいます。ナレッジワーカーは決まった時間に家に帰らないし、自分の役割もはっきりしません。人間関係はしばしば難しいものになり、多くの交渉が必要になります。ものごとを達成するためには、良質な人間関係を維持することが求められます。

入山(早稲田大学ビジネススクール准教授):
 なるほど、時代は過渡期にあるというわけですね。

ハンター:
 そうだと思います。現代のナレッジワーカーである私たちはお互いを信頼することによって、ものごとを「引き起こす力」を生み出すことが必要です。ビジネスにおいて人間関係がとても重要な役割を持っているわけですね。

 もちろん工業化社会の労働においても信頼関係は存在しますが、その強さは小さく、曖昧なものだったといえるでしょう。19世紀末期から20世紀にかけて、工業化社会で成功するために我々に求められたのは、「読み書き」と「的確に指示に従う」といったことでした。教育もそれに伴っていました。

 しかし、今の時代にはそうした教育は適合しません。21世紀のリベラルアーツ(一般教養)には、「自分自身の心の管理を学ぶ」というセルフマネジメントが不可欠なのです。そして、そのマネジメントの意味は「管理」ではなく、「付き合い方を知って、臨機応変に対処していく」という捉え方をすべきです。マインドの在り方こそ、人生を形づくるうえで重要なのです。つまり、自分ひとりの考えに固執することなく、その考えを他者との共有することによって、人生を素晴らしいものとすることができるのです。

ジェレミー・ハンタージェレミー・ハンター氏(クレアモント大学院大学 P.Fドラッカー経営大学院 准教授 / Executive Mind Leadership Institute 代表)
「Self Management」理論研究の第一人者。“人生の豊かさ(Wellbeing)”と“仕事のパフォーマンス最大化”について研究。ミハイ・チクセンミハイ(世界的に著名な認知心理学者で「フロー」理論の提唱者)とともに、クレアモント大学院内にQuality Of Life Research Centerを設立。現在は、クレアモント大学院内に「Executive Mind Leadership Institute」を設立し、代表をつとめる。コンサルティング実績は米トヨタ自動車営業、ロサンゼルス警察など、企業、公的機関含め多数。ハーバード大学院にて修士、シカゴ大学にて博士課程修了。

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