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Startup Studioによる事業開発

大企業の新規事業開発を加速する「CVC連動スタジオ」や「コーポレート・スタートアップスタジオ」

Startup Studioによる事業開発:第3回

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スタジオはリーン・スタートアップの理論を「補完」する存在に

 スタートアップでは、はじめにアイデアがあり、ベータ版の商品を作り、ベータ版で顧客を発見することが肝心です。そして顧客のフィードバックからマーケットニーズ=データを獲得し、獲得したデータから組織的に修正ポイントを学習することで商品を改良していきます。そうやって導き出したKPI(事業経営における中間指標)をにらみながら、成長と資金調達を目指すというのが勝利の方程式です。

 このリーン・スタートアップの公式のおかげで、起業はよりサイエンスに近づきました。近年、この方程式はスタートアップだけでなく、大企業の社内起業家たちや新規事業開発チームからも注目され、リーン・スタートアップはプロセスイノベーションとして世界中の企業で採用されています。しかし、問題はこの方程式を援用するだけでは、ひと握りの恵まれた起業家以外、事業をスケールさせていくのが難しいという点です。シリコンバレーのような潤沢なリスクマネーが集中する肥えたエコシステムの中ですら、方程式を駆使しても「死の谷」を越えるのが難しいのです。シリコンバレー以外の発展途上にあるエコシステムでは言うまでもありません。

新規事業開発に必要な「組織的なイノベーション」を起こすスタートアップスタジオ

 よくある失敗の原因は以下の通りです。チームにエンジニアやデザインに必要な能力が不足していた、顧客開発や営業をするマーケティング部隊の人員が足りなかった、参入した産業で事業を拡大するノウハウが足りなかった、流通網が不十分だった、オフィスやオペレーティング費用を含め会社化するためのコストが高すぎた、開発の外注などでバーンレートが高く資金繰りができなくなった......。人的リソースや事業ノウハウ、インフラ、資金面での問題が多すぎるのです。大企業の社内起業家でも、失敗の原因はおおむね同じでしょう。

 スタートアップスタジオがシリコンバレーだけでなく、特に発展途上のエコシステムにおいて勢いを増している背景にあるのは、こうした人的リソースや事業ノウハウ、インフラ、資金面での問題を組織的に解決しようとしているからです。スタートアップスタジオであれば、起業の成功確率を上げるために必要な経験とスキルを持ったメンバーを組織的に集めることができ、失敗体験やノウハウを蓄積しながら、連続的かつ同時多発的に多くの商品アイデアをマーケットの中で試すことができます。つまりスタートアップスタジオは、起業がより積極的に行われているこの時代に、起きるべくして起きた組織的なイノベーションといえるのではないでしょうか。

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この記事の著者

及部 智仁(オヨベ トモヒト)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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