効率化のためのシステムが硬直化した際に必要な「弁証法的な態度」
宇田川:
歴史というのはそれ自体がある種のストーリーであるという考え方もできます。今やっていることはそもそもどういう文脈で生まれたのかを知るという意味で、すごく重要ですよね。
山口さんの本でも取り上げられていたマックス・ヴェーバーの重要な議論のひとつが、「制度化」についてです。ヴェーバーが言っているのは、資本主義というのは、元々はプロテスタントの人たちのエートス、つまり価値観みたいなものによって成り立っていたということです。例えば、倹約をしつつ一生懸命商売に取り組む。そうすると結果として資本の蓄積が進んでいくわけですね。それができあがっていく段階の人たちは、ちゃんと理念の中で生きていたのですが、システムが完成して制度化すると、人間はそれに絡め取られるようになってしまうんです。そこを抜け出すには、弁証法的な取り組み、今の“正”にぶつかる“反”があるときに“合“を見出していくということが必要だと、先ほどのお話を聞いて理解しました。