日本の組織が抱える“3つの部族問題”を解消する、「変態ミドル」と「フォロワー」の存在

埼玉大学 准教授 宇田川元一氏 × 株式会社アクション・デザイン 代表取締役加藤雅則氏:前編

 ティール組織、ホラクラシー等、近年組織開発に関連するワードを目にすることが増えている。企業のイノベーションは今日の日本企業の大きな課題とも言われる。多くの日本企業が過去最高益を記録するなかで、こういったことに関心を持つ人が多いのは、おそらく「今はいい、しかしこのままでは将来的には立ち行かなくなる」という危機感の表れだろう。日本企業は今後どうしていったらいいのだろうか。イノベーティブで協働的な組織のあり方とその実践について研究を行う宇田川元一氏(埼玉大学 准教授)とコーチングや対話型の組織開発により日本の組織を活性化するという課題に長く取り組み、『組織は変われるか』等の著作がある加藤雅則氏が語り合った。前後編の2回に分けてお届けする。

[公開日]

[語り手] 加藤 雅則 宇田川 元一 [取材・構成] フェリックス清香 [写] 長谷川 梓 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 企業戦略 トラリーマン ポジティブ・デビアンス ミドルアップダウン

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かつてティール組織だった日本企業は、“3つの部族”に分断されている

宇田川 元一氏(埼玉大学大学院 人文社会科学研究科 准教授、以下敬称略):以前、加藤さんと座談会で「ティール組織」について語りましたが*、この話は20世紀的組織の変革の話だけだというわけではないのですよね。

加藤 雅則氏(株式会社アクション・デザイン 代表取締役、以下敬称略):そうですね。エッセンスレベルで見ると、実は80年代の日本企業は極めてティール的ですよね。むしろ、現在はティール的な組織から逆行してきてしまっているように思います。

宇田川:そうですね。1980年代に日本的経営は次世代の経営だと言われてきました。IT革命の中で日本的な経営を取り込んで実践しているアメリカ企業もあったほどです。それは単に日本の景気が良かったからという理由だけではないでしょう。

ただ、その後のバブル崩壊からが何か変わってきてしまった。バブル崩壊は、今考えると明治時代に始まった日本の近代化が終わったというほどのインパクトだったと思います。そして直後にIT革命が起き、さらにSarbanes-Oxley Act(SOX)がアメリカで起きてきて、内部統制を非常に重視するようになりました。一方で、事業戦略は選択と集中が必要となり、テクノロジーへの急速な対応も必要になり、アカウンタビリティとの間で板挟みになってしまった。それらのことに追われて浮き足立っている時期にやらなきゃならない課題が一気に山積しましたよね。

加藤:日本の企業はバブル崩壊後、とくに、リーマンショック後からの10年くらいで非常に効率的で機能的になったとは思います。ただ、その結果削ぎ落としたものがあると思うんですよね。

海外からの理論を持ち込んで同じようにすれば勝てるというのは間違っていて、同じようにしていたのでは負けるんです。和魂洋才の精神で日本の文脈に合う形にしなければ、海外企業には勝てません。今、日本企業は本当に分岐点にきていると思います。

宇田川:そうですね。そんな日本企業を見て、加藤さんが今一番問題だと思っていることは何ですか?

加藤:かつて日本の組織というのは、ある種の一体感、“俺たちの会社”みたいな感覚があって、それが強みだったと思います。しかし、現在は多少バブルを知っている人たちと、就職氷河期の人たち、それから「ゆとり世代」と呼ばれる人たちに分断されているように感じていて、そこが気になっています。「上の人たち」、「ミドル」、「若手」といった3つの部族に分断している。価値観、心情、行動パターン、学び方がこの三者では「部族」と言いたくなるほどはっきりと違うように感じるんですよね。

過去10年くらいは企業経営では戦略論が盛んでしたが、今は組織論が盛んになってきています。そういったことも、この分断と関係があると思います。もちろん、昔と同じことをもう一度やればいいは思いませんが、良い要素は取り戻していったほうがいいと強く感じます。

宇田川:それは僕も感じますね。大企業の若手有志による団体「One JAPAN」 等さまざまなところで若手社員の方々に話を聞くこともあり、一方で経営層の方と話す機会も増えたのですが、若手社員は「社長はわかってくれるけれど、本部長クラスの方々に理解されない」とおっしゃっている。一方で、取締役、常務クラスの方々は若手にもっと創意工夫を出してほしいと呼びかけているけれど反応が薄いと悩んでいらっしゃる。そして、ミドルはミドルで悩んでいるんですよね。

加藤:ミドルの人たちが就職したのは採用抑制期でしたから、人数が少なくて中途で補っている状況ですよね。社内にネットワークもないし、遠慮もある。一方で、現在はティールみたいな考え方や組織を多くの人が求めている時代でもあります。

宇田川:お互いがお互いのことをわかっていないのですよね。その結果、何が起こるかというと「うまくいかないのはあの人のせい、あの人たちがわかってくれないから」という他罰的・他責的な気持ちが生まれている状況。とても不幸な状況ですよね。

加藤 雅則加藤 雅則氏(株式会社アクション・デザイン 代表取締役/組織コンサルタント)
1964年生まれ。名古屋市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。カリフォルニア大学バークレー校経営学修士(MBA)。日本興業銀行、環境教育NPO、金融庁検査官、事業投資育成会社を経て、米国2大コーチ養成機関であるCTI日本支部の設立に参加。日本におけるコーアクティブ・コーチングの普及に取り組んだ。現在はアクション・デザイン代表。著書に『自分を立てなおす対話』(日本経済新聞出版社)、『「自分ごと」だと人は育つ』(共著、日本経済新聞出版社)『組織は変われるか』(英治出版)など。
2001年よりコーチング、ファシリテーション、コンサルテーション、ナラティブ・アプローチなどに基づく独自の対話手法を実践。これまで支援してきた企業は東証一部上場企業を中心に、中堅企業、オーナー企業、外資系企業など多岐にわたる。

*:宇田川氏、加藤氏が参加した座談会の記事
第1回:『ティール組織』とは何か──組織の問題は「個人ではなく構造」から発生し「型ではなく文脈」で考える
第2回:有機的な組織が不確実性に有効という結論を、なぜ『ティール組織』は蒸し返すのか?
第3回:ティールだった企業がオレンジに──「既存の仕組みの内側」から組織を変えるには
第4回:経営者を知り、道具箱を解体し再構築する「ミドルの役割」とは──ティールを語る前に

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